共犯者同士の弁護人 「真に恐るべきは、有能な敵ではなく、無能な味方である」
「真に恐るべきは、有能な敵ではなく、無能な味方である」とはナポレオンの格言とされる。味方にこそ要注意ということだ。
これは刑事事件においても変わらない。
例えば、ある事件について共犯者AとBが起訴されているとする。AとBが同じ弁護士に依頼してきた場合、(1)依頼を受けてもよいか、(2)依頼を受けるべきかというテーマがある。
(1)については、「一律に禁止されていない」というのが一応の回答である。このため、特に深く考えずに受任する弁護士もいるようである。
しかし、私は、(2)に関して、基本的にお断りしている。上記の事例であれば、双方とも断るか、一方については別の弁護士を紹介するようにしている。
弁護士職務基本規程では、利益相反がある場合に事件を受けてはいけないとされている。例えばお金を貸した人と借りた人、ある事件の加害者と被害者の事件を同時に受けることはできない。片方の味方をすれば片方の敵に回ることが明らかであるからである。
しかし、共犯者間においては、明確に利益相反が生じているとは限らない。このため、共犯者同士の事件を受けること自体は、一律に禁止されてはいないのである(1)。
しかし、本当にそうだろうか。
世の中、味方同士で争い始めるというのは日常茶飯事である。刑事事件の共犯者同士についても、お互いに責任をなすりつけ合うことはよく見られる光景である。たとえ、弁護士に依頼した時点では足並みが揃っていたとしても、人間というのは究極的には自分の利益を追求するものであるから、自己保身のために味方を裏切るというのは仕方のないことだ。
つまり、共犯者間には、潜在的に利益相反があるのである。
共犯者同士の場合、量刑を決める要素としては、誰が重要な役割を果たしたか(首謀者か)や、利益の分配はどうだったか、誰が言い出したかなどが重視されることが多い。これらは、共犯者同士で言い分が食い違うと、お互いに自分の役割を過小評価し、他の共犯者の役割を過大評価することになるから、まさに利益が相反することになる。まして、否認事件(例えば、ABが窃盗の共謀として起訴され、AはBとグルになって泥棒したことを認める一方、Bは、Aにいわれてついていっただけで、泥棒をするなんて夢にも思わなかったと弁解するような場合を想像してほしい)の場合は、正面から利害が衝突することになる。
そして、当初は利益相反がなかったものの、途中から仲間割れを始めた場合、弁護人としては、全員の弁護人を辞任するのが原則である。従って、共犯者同士の依頼は、「途中で仲間割れが始まって全面的に手を引かざるを得なくなるリスク」を弁護人も被疑者・被告人も負っていると言え、かかるリスクを勘案した場合には、お互いのために、原則として断るという選択を取らざるを得ない。
私が見聞きしている例だと、例えばAB双方の弁護人を引き受ける代わりに、弁護士費用はABそれぞれを受任した場合よりもいくらか割引する、といった形で、共犯者の弁護活動を受任する弁護士もいるそうである。しかしながら、上記のように、そこには大きなリスクがあることを意識しておくべきである。
刑事弁護人というのは、最後まで被疑者・被告人のために活動する使命を負っている。ひとたび他人のことが頭をよぎるようでは、その時点で最善の弁護活動はできない。共犯者同士の事件の場合は、特に注意が必要である。
【絶対的権力は絶対に腐敗する】ジャニーズ調査報告書を読んだ感想【圧倒的独裁者】
https://youtu.be/vO2WJwqkOCU
※ダイジェスト版 【絶対的権力は絶対に腐敗する】ジャニーズ調査報告書を読んだ感想【圧倒的独裁者】
https://youtu.be/wA52q3FW8dU
事務所ホームページ
刑事事件特設サイト
https://mfuklocriminaldiffence.com/
医療事件特設サイト
https://mfuklomedical.com/
離婚事件特設サイト
https://mfuklorikon.com/
Twitter
https://twitter.com/mizuno_ryo_law
Instagram
https://www.instagram.com/mizuno_ryo_…
お問い合わせフォーム
医療 http://u0u0.net/YcJ9
刑事 http://u0u0.net/TIMP
交通事故 http://u0u0.net/WaqQ
離婚 http://u0u0.net/wtgL
債務整理 http://u0u0.net/RZH3
その他 http://u0u0.net/UNfR
LINE登録無料 https://page.line.me/mizunofukuoka
その他のコラム
東北自動車道追突事故 正しい道路交通法の知識を持って運転しよう
東北道バス事故で3人死亡、宮城 エンジントラブルで停車中 宮城県栗原市の東北自動車道下り線でバスに大型トラックが追突した事故で、県警は17日、バスの運転手の日本人女性と、乗客だったネパール国籍の男性2人の死亡を確認したと発表した。大型トラックの男性運転手は頭を強く打ち、重傷を負った。県警高速隊によると、バスはエンジントラブルで路肩付近に停車。運転手と乗客40人が全員降車した後、後方付近にいた3人がトラックにはねられたとみられ...
4年前の広島地検検察官自殺 公務災害に認定
以前(2021年12月1日) に 広島地検検察官公務災害に思うこと という記事で紹介した、広島地検公判部所属の29歳男性検察官が自殺した事件について、公務災害が認定されたという報道がなされた。 4年前の広島地検の検察官自殺 法務省が「公務災害」認定 4年前、広島地方検察庁の男性検察官が自殺し、遺族が「公務災害」の認定を求めていた問題で、法務省が時間外勤務の状況などをもとに「公務災害」に認定したと、遺族の...
【速報】 経産省官僚による給付金不正受給の判決について
はじめに 経済産業省のエリート若手官僚2名が、新型コロナウイルスの給付金である、家賃支援給付金及び持続化給付金合計約1,550万円を不正に受給したとされる詐欺事件の判決公判が、本日(令和3年12月21日)に開かれた。 東京地裁(浅香竜太裁判官)は、被告人Sに懲役2年6月の実刑判決を、被告人Aに懲役2年執行猶予4年の判決を言い渡した。 こちらの記事などで報道されている。 本稿では、報道発表されている内容を踏ま...
持続化給付金の不正受給(詐欺)について
はじめに 新型コロナウイルスにより、売上高が減少した個人事業主などを救済するための、持続化給付金という制度が悪用されている。困ったことに、犯罪組織などの反社会的集団が、言い金儲けの手段として目を付け、普段は犯罪とは無縁な一般人を言葉巧みに誘い、犯罪に走らせるという出来事が全国で無数に発生している。今回は、持続化給付金の不正受給について、手口や、万一関わってしまった場合の問題点、国の対応に対する疑問などについて述べていきたい。...