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最決令和7年11月27日令7(し)1043号 東大病院汚職事件贈賄ルート勾留特別抗告審

決定要旨

本件被疑事実の要旨は、「医療関連商品の製造販売等を営む会社の営業所長であった被疑者が、同社の営業担当者と共謀の上、国立大学医学部附属病院の医師に対し、同社の取り扱う医療機器を使用するなどの有利かつ便宜な取り計らいを受けたことに対する謝礼等の趣旨で、同社名義の口座から同病院専用名義の口座に40万円を振込入金し、このうち34万4000円相当の、同医師が選定した物品の購入等をすることができる利益を得させ、もって同医師の職務に関し賄賂を供与した」というものである。
原々審は、勾留の必要性がないとして勾留請求を却下した。これに対し、原決定は、本件事案の性質・内容(対向犯である上、更に多くの関係者が様々な立場で関わっていることや、被疑者と関係者らとの人的関係等)、被疑者や関係者らの供述内容及び供述状況に加え、想定される争点について関係者らの供述による立証が重要となる証拠構造、原々裁判時における捜査の進捗状況等を踏まえると、被疑者が関係者と通謀するなどして、罪体及び重要な情状事実について罪証を隠滅するおそれがあり、このようなおそれは、被疑者が罪証隠滅行為に及ばない旨誓約しているなどの事情のみからは否定できず、被疑者の捜査に対する対応状況等も踏まえると、逃亡のおそれもないとはいえず、勾留の必要性も認められるとして、罪証隠滅のおそれが高度であることを前提に、原々裁判を取り消した。
本件において勾留の必要性の判断を大きく左右する要素は、罪証隠滅の現実的可能性の程度であると考えられる。この点につき、記録によれば、原々裁判は、原決定指摘の事情も考慮の上で、罪証隠滅の現実的可能性を肯定しつつ、客観的証拠の収集及び客観的証拠を踏まえた関係者らからの事情聴取が相当に進んでいること、被疑者自身も数か月にわたって任意の取調べにおおむね応じていたこと、被疑者が既に上記会社を退職しており、同社関係者が従前の供述を翻して被疑者に有利な供述をするというような強い関係性まではうかがわれないことに鑑みて、罪証隠滅の現実的可能性が高くはないと判断したものと認められる。このように、原々裁判の判断は、一件記録に基づき、罪証隠滅の現実的可能性の程度を基礎付ける事情を具体的に検討した上でされたものであって、その判断理由にも一定の合理性があるといえる。しかるに、原決定は、罪証隠滅の現実的可能性の程度について、原々裁判が判断の基礎としたものとほぼ同一の事情を指摘するのみで、これらの事情に関する原々裁判の評価が不合理であるとする理由を実質的に示すことができていないといわざるを得ず、原々裁判と異なる判断をした理由を示したものとはいえない。
そうすると、勾留の必要性を否定した原々裁判を取り消して、勾留を認めた原決定には、刑訴法60条1項、426条の解釈適用を誤った違法があり、これが決定に影響を及ぼし、原決定を取り消さなければ著しく正義に反するものと認められる。

解説

本件は、国立大学病院を巡る汚職事件において、贈賄側である被疑者について勾留を認めなかった原原決定を正当とし、検察官の準抗告を認めて被疑者に勾留状を発布した原決定を取消したものである。
一般的に、対向犯であり、密室のうちに実施されることが多く客観的証拠に乏しい贈収賄事件に関しては、罪証隠滅の可能性が認められて勾留状が発布され、さらには接見禁止も付されることが多い。
しかしながら、本件では、相当程度の期間にわたって任意捜査が継続していたようであり、その間、被疑者は取調べにも応じており、特に罪証隠滅行為を企てるようなこともなかったようである。また、被疑者が贈賄側の会社を既に退職しており、関係者と口裏合わせを行って罪証隠滅を図る可能性が高くないことなども考慮して、原原決定は検察官の勾留請求を却下したものと思われる。これに対して、原決定は、抽象的な考慮要素を掲げるに留まっており、「原々裁判の評価が不合理であるとする理由を実質的に示すことができていない」ものと判断された。
決定文からは読み取れないものの、勾留請求却下に至るまでには、弁護人が苦労したことが想像され、いわゆるホワイトカラークライムにおいて、早期に弁護人を選任した上で適切に対応することが、被疑者の社会的地位や生活に与えるダメージを最小限に留めるために、極めて重要な意義を有することが示唆される。

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