交際中もしくは婚姻関係にある相手方とのトラブル・感情のもつれから、刑事事件に発展することがあります。かつては、警察は、「民事不介入」として、男女間のトラブルに介入することには極めて消極的でした。しかし、近年、ストーカー行為やDVがエスカレートして重大な結果を引き起こす事件が増加していることなどを踏まえ、積極的に介入するようになってきています。
このような場合に該当しうるのが、「ストーカー行為」や「DV(ドメスティックバイオレンス)」などといった犯罪であり、それぞれ法律で定められた罰則の対象となります。では、ストーカーやDVによる刑罰はどの程度のものなのでしょうか。また、これらの加害者になったときにやるべきことには、どのようなことがあるのでしょうか。ここでは、ストーカーやDVの加害者に向けて、対応策を解説します。
ストーカー行為とDVは、それぞれ次のような法律で規定されています。
それぞれ、どういった行為が罪に問われるのかや刑罰の重さなどを確認していきましょう。
ストーカー行為は主に「つきまとい」など8つの行為を同一人物に対して繰り返し行うことと定義されています。ちなみに、8つの行為とは次のとおりです。
ストーカー行為そのものを罰するものと、警察からの禁止命令に違反したことを罰するものがあります。いずれの場合も懲役刑が科される可能性があり、決して軽い罪とはいえません。
また、ストーカー行為を行うに際して、被害者の家に侵入するなどすれば住居侵入罪が、被害者の家の物を壊すなどすれば器物損壊罪が適用されることもあります。
DV防止法では、パートナーからの暴力の防止、及び被害者の保護・支援を目的とした法律です。婚姻関係にある者同士に限られず、事実婚状態にあるパートナーも対象となります。
また、DV防止法では、被害者からの申し立てによって接近禁止命令を発令すると定めています。この禁止命令に違反すると、次のような罰が科されます。
このようにストーカー行為、DVはれっきとした刑法犯であり、逮捕・起訴される可能性もあります。また、ストーカーやDV事案は、今後も被害者に対して接触を試み、被害申告を取り下げさせるなどする可能性が高いと判断されることが多く、特に禁止命令違反の場合は、既に警察から禁止命令という警告を受けていたにもかかわらず、さらにストーカー行為やDV行為に及んでいるという事実が重視されるため、逮捕・勾留される可能性が高いといえます。もし逮捕された場合、最大23日間もの間、身柄を拘束されることになります。その間は、一般的な社会生活は送れなくなるわけです。
ストーカー規制法、DV防止法は、いずれも被害者の生命・身体の安全や生活の平穏を保護するための法律です。このため、早期の釈放はもちろん、不起訴処分や略式命令による罰金刑をめざし、あるいは起訴後に有利な情状を主張するために、被害者との示談は極めて重要です。示談にあたっては、示談書に、被害者に対して、電話・メールなど手段に関わりなく、今後一切、接触しないといった文言を盛り込むことも検討すべきでしょう。
ただし、当事者同士の示談はほぼ不可能です。なぜなら、ストーカー行為やDVは被害者側が加害者との面会を拒否することが多く、そもそも示談の場が用意できませんし、被害者保護の観点から、捜査機関も直接の示談は控えるように求めることが通常です。加えて、加害者が逮捕・勾留された場合には、勾留や接見禁止によって著しく行動を制限されることから、代理で示談をする人間が必要になります。つまり、弁護士のような外部の専門家を間に挟んだ示談交渉が必須なのです。
一方、自分に非が無い、身に覚えがないといった場合も、弁護士が「ストーカー行為やDVに該当するか」をについて法的な立場からアドバイスを行うことができますので、早急な相談がおすすめです。
ストーカーやDVは、近年厳罰化の傾向にありますが、早期に弁護人が活動することによって、不起訴処分や略式命令による罰金刑など、軽い処分を求めていくことが可能です。自分のした行為がストーカーやDVに該当するか判断がつかない場合も含め、早急に弁護士へ相談することをおすすめいたします。刑事事件に強い弁護士ならば、取調べ時の対応や不起訴処分に必要な証拠、示談書の作成を含めた、トータルなサポートが可能です。