近年、飲酒運転に対する罰則強化が進んでいます。ここでは、飲酒運転に対する道路交通法上の罰則について見ていきます。なお、事故を起こしてしまった場合についてはこちら、ひき逃げや当て逃げについてはこちらをご覧下さい。
酒気帯び運転とは、血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム以上、または呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上を保有する状態で運転することを言います。実際上は、呼気検査で測定をすることが多く、検問をきっかけに発覚することが多い類型です。酒気帯び運転をするかもしれないと知りながら、車両を提供したり、酒を提供したり、車に同乗したりした場合も罰則の対象になりますので、注意が必要です。
酒酔い運転とは、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態で運転を行うことを言い、酒気帯び運転が血液や呼気中の濃度から機械的に判断されるのに対し、運転動作を適確に行えるかどうか、という観点から実質的に判断されます。
酒気帯び運転・酒酔い運転が検問により発覚した場合など、特に事故を起こした、と言った事情があるわけではない場合であれば、そもそも逮捕されないこともあり、また逮捕されても勾留請求されずに釈放される場合もしばしばです。これに対して、人身事故を起こした場合や、否認事件などの場合は、勾留が認められることもあります。
もっとも、当事務所では、相当程度、重大な人身事故を起こしていた場合や、当時の記憶がおぼろげにしか残っていなかったような場合でも、勾留決定に対する準抗告を行った結果、早期に釈放された実績が複数あるため、諦めずに弁護活動を行っていくことが重要であるといえます。
酒気帯び運転単独であれば、略式命令による罰金刑となることが比較的多いと思われます。しかし、無免許運転など、他の交通違反がある場合や、前科前歴、交通違反歴の内容によっては、初犯から公判請求される事例も増加傾向にあります。また事故を起こした場合には、公判請求されることも多いといえます。
これに対して、酒酔い運転の場合、公判請求されることがほとんどのようです。
酒気帯び運転・酒酔い運転については、車の運転という側面と、アルコールの問題という側面から、弁護活動の方針を検討する必要があります。
まず、無免許運転がセットになっている場合には、当面の間、運転免許は取得できないことから、自動車を運転させないようにする方法の確立が必要です。例えば、家族が鍵を管理し、合鍵を自由に使えなくするとか、車自体を廃車にする、と言った方法が考えられます。他にも、高齢ドライバーについては免許の自主返納も検討します。もっとも、地域によっては、自動車がなければ生活できないところもあるため、そうした場合には、免許を再取得することを前提に、それまでの生活を具体的に検討することになります。
酒については、断酒させることにこだわる裁判官もいれば、酒を飲むこと自体は何ら違法でないのだから、運転さえしなければよく、断酒することは量刑上大きな考慮要素にはならない、と考える裁判官もいるようです。但し、未成年者のように、元々酒を飲んではいけない立場にある場合や、アルコール依存症の問題を抱えている場合などには、飲酒自体の問題に向き合った形で弁護活動を展開する必要があるといえます。
福岡県では、特に、福岡市職員が子ども3人を死亡させ、危険運転致死傷罪等で最終的に懲役20年の有罪判決を受けた事故があり、これ以来、飲酒運転には特に厳しく対処している傾向にあります。他方で、酒気帯び運転の法定刑は2年以下の懲役又は30万円以下の罰金、酒酔い運転の場合でも法定刑は3年以下の懲役又は30万円以下の罰金であることから、同程度の法定刑の定めがある他の犯罪類型に比較して、重く処罰されすぎているのではないかと疑問に思うような事例にしばしば出くわすことも事実です。弁護人としては、世論に迎合することなく、適正な手続で刑事手続が進んでいくよう、絶えずチェックするという姿勢を持って弁護活動を行っています。