「口論がエスカレートして、つい手が出てしまった」「カッとなって相手を刺してしまった」といったケースのように、相手をケガさせてしまった場合、加害者は傷害罪や傷害致死罪といった罪に問われる可能性があります。
このとき、加害者本人および加害者の家族はどのように対処すればよいのでしょうか。
ここでは、傷害罪や傷害致死罪の概要、さらに逮捕されてしまったときにやるべきことについて解説します。
わざと暴力を振るって人にケガをさせる、あるいは「相手がケガをしてもかまわない」という気持ちで暴行に及んでケガをさせたときなどでは、傷害罪が成立し、これによって被害者が死亡した場合には、傷害致死罪に問われる可能性があります。
傷害罪(刑法204条)は、暴力行為などによって人に傷害を負わせたときに成立する犯罪です。
ここでいう「傷害」は、いわゆる「ケガ」よりももう少し広い概念です。
殴る・蹴るなどして肉体的なケガを負わせる場合はもちろん、暴力行為でPTSDを発症させた場合なども「傷害」にあたります。
さらに、嫌がらせにより相手をうつ状態に追い込んだようなケースなども、場合によっては傷害罪が成立する余地もあります。
傷害致死罪(刑法205条)は、わざと人に傷害を負わせた結果、相手が死んでしまった場合に成立する犯罪です。
「人の死亡」という重大な結果が生じていることから、傷害罪に比べても重い罰則が定められています。
なお、最初から殺意があった場合には、傷害致死罪ではなく殺人罪が成立します。「相手を殺すつもりはなかったが、結果的に相手が死んでしまった」という場合に成立するのが傷害致死罪です。
傷害罪や傷害致死罪の疑いで起訴された場合、次のような刑罰を受ける可能性があります。
傷害罪の法定刑は、1ヶ月以上15年以下の懲役、または1万円以上50万円以下の罰金です。
傷害の程度が重い場合などは、初犯でも実刑になる可能性もあります。
傷害致死罪の法定刑は、3年以上20年以下の懲役です。
実刑となることが多いものの、行為自体の危険性や犯行に至る経緯などの事情によっては、執行猶予付の判決となることもあります。
裁判員裁判対象事件です。
以上、傷害罪や傷害致死罪は、人にわざとケガをさせたときに成立する罪です。
過失で人を傷つけてしまった場合には、過失傷害罪・過失致死罪(刑法209条)や業務上過失致死傷罪(刑法211条前段)、重過失致死傷罪(同後段)などが成立します。
わざとケガをさせているわけではないことから、いずれの場合も法定刑は傷害罪・傷害致死罪よりも軽く設定されています。
最近では、悪質な自転車事故について、重過失致死罪が適用されて実刑判決が言い渡されるような事例もあるため、こういった事案の場合には注意が必要です。
傷害罪や傷害致死罪にあたる行為を行った場合、警察に逮捕・勾留される可能性があります。
勾留されると逮捕と併せて最大23日間身柄を拘束されるため、社会生活への影響ははかりしれません。
また、その後起訴され、刑事裁判になれば、有罪判決を受ける可能性が高くなります。
もし身近な人が傷害罪や傷害致死罪で逮捕されそうになった場合、少しでも有利な処分を勝ち取るためにも早急に対策を考える必要があります。
傷害結果が軽く、目撃者が多数、存在するような場合には、そもそも逮捕されないことも多く、在宅で捜査が行われる場合もあります。
また、現行犯逮捕されたものの、勾留請求されずに釈放される事案や、勾留請求が却下される事案も増えてきています。
他方で、共犯者がいるなど関係者が多数に渡る場合、被害者と被疑者との関係性などから被害者に対して被害届の取下げを迫るなどの働きかけの可能性がある場合などには、勾留が認められやすいといえます。
特に、DVや児童虐待が疑われる事案では、比較的勾留されやすい傾向にあるといえます。
この場合でも、示談交渉を進めることによって、罪証隠滅の可能性が低下したとして、勾留取消請求などを行い、早期の釈放を目指していくことが重要です。
これに対して、傷害致死罪の場合、勾留が認められることが多いといえます。
もっとも、最近では、裁判員裁判対象事件であることもあり、公判の準備を十分に行う必要が高まっていることから、保釈が認められる事例も出てきています。
傷害に至らず、暴行罪の成立にとどまる場合や、傷害結果が軽微な場合は、起訴猶予処分となる場合が多いといえます。
示談をすることで、起訴猶予となる可能性が高まることは後記の通りです。
また、示談が成立しなかった場合でも、略式命令による罰金刑となる可能性も十分あります。
これに対して、前科前歴、特に傷害など粗暴犯の前科前歴が複数存在する場合や、傷害結果が重い場合、犯行態様が悪質(凶器を用いる、暴行回数が多い、暴行時間が長い)な場合などは、公判請求される可能性もあります。
傷害致死罪の場合、死亡結果が生じているということもあり、公判請求された上で実刑となることが多いといえますが、暴行自体は軽微であったものの、たまたま打ち所が悪かったために死亡してしまった場合のように、行為態様自体が悪質なものといえない場合、被害者にも大きな落ち度があるなど犯行に至る経緯に酌むべき点がある場合などは、執行猶予が選択されることもあります。
裁判員裁判対象事件のため、これらの事情を裁判員に丁寧に説明していくことが重要です。
まずは被害者と示談交渉を行い、被害弁償を行うことが重要です。
被害弁償を行い、被害者の受けた損害を賠償することは、刑事処分を決める上で加害者にとって有利な事情として働きます。
また、日本の刑事司法では、加害者の処分を決める上で「被害者の処罰感情」が重視されます。
そのため、示談を成立させ、示談書に「加害者の処罰を望まない」旨の一筆(宥恕条項)を入れてもらえれば、不起訴処分になる、あるいは刑が軽くなる、といった効果も期待できるのです。
ただし、加害者本人やその関係者が、直接被害者サイドに接触しようとすることは、かえって問題をこじれさせるリスクがあります。
弁護士に依頼し、代わりに示談交渉をしてもらうのがおすすめです。
逮捕された、あるいは警察の捜査を受けている、という知らせを受けた時点で、速やかに刑事事件に詳しい弁護士に相談されることをおすすめいたします。
刑事事件の被疑者となった場合、逮捕後72時間は弁護士以外の人間との接触は許されていません。
身柄を拘束されている被疑者と連絡を取るためにも、弁護士の力が必要です。
もし自分にとって身近な方が傷害事件の加害者になってしまったら、一刻も早く弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士がいれば身柄拘束中の本人とも連絡を取り合うことができますし、さらに身柄拘束から解放されるように働きかけることも可能です。
また、万が一裁判になってしまったときでも、弁護人としてベストを尽くします。
同じ傷害事件でも、冤罪の場合、被害者にも非がある場合など個別具体的な状況は人それぞれ違います。
刑事事件に力も入れる弁護士として臨機応変に対処いたしますので、お話だけでも聞かせていただけましたら幸いです。
当事務所ではテレビ電話での相談も行っていますので、夜間や土日の相談にも柔軟に対応いたします。
まずはお問い合わせフォームより、あなたのお悩み事を聞かせてください。