自分は刑事事件とは無関係、と思っていても、ある日突然、犯罪被害に遭ってしまうということは、決して考えられない話ではありません。
ここでは、不幸にしてそのような被害に遭ってしまった場合の、被害者の刑事事件への関わり方について説明していきます。
被害に遭った場合、まずは警察や検察などの捜査機関に捜査をするよう働きかける必要があります。
もっとも、捜査機関のリソースは有限であり、また証拠がなければ立件できないため、十分な準備と証拠収集をした上で、捜査機関と交渉を行う必要がある場合もあります。
具体的には、まずは担当する警察署や部署を確認した上で、被害相談に行きます。
ここで、被害届や告訴状を受理してもらえればよいのですが、一度の面談ではなかなか受け付けてくれないことも多いため、粘り強く交渉することが必要です。
実際に捜査が開始された後も、定期的に担当部署と連絡を取り、進捗状況について問い合わせを行います。
また、加害者が逮捕・勾留されるなどして事件が本格的に動き出した後は、担当の検察官と面談の上、処分の方針について交渉を行います。
また、事案によっては、警察官や検察官による被害者の詳細な取り調べが行われることもあり、取り調べに同行することもあります。
加害者が起訴されて公判になった場合には、公判手続に関与していくことが考えられます。
その際に用いられるのが被害者参加の制度です。
被害者参加は、一定の犯罪について、被害者(被害者が死亡している場合には、一定範囲の遺族)が、加害者の公判手続に参加し、被告人質問を行ったり、求刑など、事件に関する意見を述べることができるという制度です。
被害者自ら公判に出席して意見を述べてもかまいませんし、あらかじめ準備をした上で、公判には被害者参加弁護士のみが参加するという方法も可能です。
また、否認事件や裁判員裁判対象事件については、被害者の証人尋問が行われ、事件の内容について詳細な質問がされることなどにより、二次被害が発生する可能性もあります。
このような被害者の負担を可能な限り軽減するため、尋問の方法(ついたてを置いたり、ビデオリンク方式で別の裁判所から尋問を行うということも法律上は可能です)について検察官や裁判所に働きかけを行うことが考えられます。
上記は全て刑事事件に関する手続ですが、十分な被害回復を図るためには、民事上の責任追及も必要不可欠です。
これについては、刑事事件に関わる中で、加害者の弁護人と交渉して示談交渉を行うという方法もありますが、加害者に十分な資力がない場合には、別途、検討を要します。
また、交通事故の場合、加害者が任意保険に加入していることが多いため、支払能力についてはさほど気にする必要がない場合も多いのですが、損害額の算定や過失相殺などに際して専門的な知識が必要となってくるため、交通事故特有の対応が必要になってきます。