窃盗罪は、文字通り他人の物を盗む犯罪です。我が国では、窃盗は、覚醒剤と並んで件数の多い犯罪に属します。警察官も、窃盗は事件捜査の基本であると教わるといいます。
窃盗には、万引き、置き引き、自転車盗、空き巣、出店荒らし、スリなど多くの類型があります。
万引きや置き引き、自転車等などで、被害額が少ない場合には、そもそも逮捕されずに最初から在宅で捜査が行われることも少なくありません。逆に、これらの類型であっても、複数の前科がある場合や、大規模・組織的に行われている場合などは、勾留が認められやすい傾向にあります。このため、特に家族や安定した勤務先がある方が逮捕・勾留されてしまった場合、速やかに釈放を目指して活動する必要があるといえます。
これに対して、空き巣や出店荒らしなどの侵入盗については、道具を用意するなど相応の計画性があり、また被害金額も多額になりやすいため、窃盗罪の中でも重い部類に属するとして、逮捕・勾留が認められやすい類型にあります。スリは、プロによる犯行であることが多いため、前科があることが多く、やはり窃盗罪の中では重い部類に属します。
窃盗罪は、財産に対する犯罪であるため、被害弁償ができたか否かが最終的な結論に大きく影響します。このため、まずは被害弁償を試みるべく、交渉を行っていくことになります。
もっとも、最近では、大手スーパーなどでは、一律に被害弁償を断るという方針にしているところもあるようです。このような場合、被害品を買い取ったという扱いにしてもらうこともありますが、それにも応じない場合、示談の経過を報告書にまとめて提出することになります。検察官も、一律に被害弁償を受け付けない店舗があることは認識しているようであり、そのような場合には、ある程度考慮してくれるようです。
これに対して、被害金額が多額な場合は、そもそも被害弁償を行うだけの経済的余裕がないことも多く、また重大事件とみなされて、被害弁償を行っても、起訴されてしまう可能性もあり得ます。
窃盗罪の場合、立件された事件以外に余罪があることも少なくありません。これについては、逮捕・勾留は事件ごとに行うものとされており、また起訴する場合にも、事件を特定して起訴することとされていますから、余罪については手続の範囲外です。また、実際上、余罪についてどの程度、捜査機関が証拠を収集しているかは分からないことがほとんどであるため、こちらから不用意に余罪について話してしまうと、捜査の端緒を与えることになりかねません。
もっとも、例えば、同一の店舗から複数回にわたって万引きをしている事案などで、そのうちの一部については証拠がなく、立件されてないような場合に、どの範囲で被害弁償を行うべきであるかは難しい問題です。
窃盗を繰り返す人の中には、知的障害をお持ちの方が一定数存在すると言われています。また、摂食障害(いわゆる過食症など)やうつ病、認知症などが背景にあると思われる窃盗事件も少なくありません。十分な資産を持っており、また特に必要もない物を大量に万引きしてしまうような場合には、病的窃盗(クレプトマニア)という精神疾患を疑う必要もあります。
こうした事件については、立件されたものについて被害弁償を行うだけでは、根本的な解決にはなりません。医療・福祉的なアプローチが不可欠であるといえます。もっとも、こうした障害や疾患は見逃されやすいことも多いため、適切な見極めが必要になってきます。