自動車は便利な乗り物ですが、一歩間違えると、重大な事故を起こしてしまうことがあります。普段、犯罪とは無縁に暮らしている方でも、人間はミスをしますから、突然、加害者になってしまうこともありえます。そうした場合、逮捕・勾留されてしまうのか、最終的な処分はどうなるのかといった点について解説します。なお、本稿では、他の違法行為が特にない類型について解説します。ひき逃げや当て逃げ、危険運転致死傷罪についてはこちらをご覧下さい。
自動車の運転上必要な注意を怠り、人を死傷させた場合には、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律という法律が適用され、法定刑は7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金と定められています。
単純な過失運転致死傷の場合、そもそも逮捕されずに在宅で捜査が行われ、あるいは逮捕されても勾留請求されずに釈放されることもしばしばです。これに対し、事故後に現場から逃走したような場合には、勾留が認められることも少なくないといえます。本稿の検討の対象外ですが、危険運転致死傷罪の適用が見込まれる場合も勾留されやすいといえます。
一方、過失運転致死傷罪は、普段真面目に生活しており、家族や安定した勤務先がある被疑者も多いため、早期の身体拘束からの解放に向けて努力すべき場面が多い類型であるといえます。
過失運転致傷の場合、傷害結果が軽微であり、任意保険による損害の填補が見込まれるような事案であれば、起訴猶予処分となることもしばしばです。また、傷害の程度がやや重い場合であっても、事故態様が悪質でなく、任意保険による損害の填補が見込まれ、前科前歴や交通違反歴に大きな問題がない場合には、略式命令による罰金刑が選択されることがあります。
これに対し、傷害の結果が重大である場合や、事故態様が悪質(スピード違反、居眠り運転、ひき逃げなど)の場合には、公判請求される可能性が高くなってきます。その場合も、執行猶予付の判決となることが比較的多いといえますが、実刑判決が選択されている事案も一部ながら存在するため、注意が必要です。
これに対し、過失運転致死罪の場合、略式命令による罰金刑となることはまれであり、公判請求されることがほとんどです。この場合でも、事故態様が特に悪質でなく、前科前歴や交通違反歴に特に問題がなければ、執行猶予付の判決となることが比較的多いといえますが、他の交通違反が加わっているものや、危険運転致死罪に近いものについては、初犯でも実刑判決となることがあり得ます。
過失運転致死傷罪については、公判請求された場合、被害者参加が可能です。当事務所では、被害者参加についても積極的に取り組んでおりますので、お気軽にお問い合わせください。