争いの当事者同士が話し合いによって合意し、解決に至るための手段として「示談」があります。特に刑事事件における示談は、刑の軽減や執行猶予判決に大きな影響を与える手続きです。そこで、刑事事件における示談の内容やメリットなどについて解説します。
刑事事件における示談は、損害賠償の有無や金額、被害者側の被害感情、刑罰に関する意見などが含まれます。特に加害者を許す意(宥恕(ゆうじょ)条項)や、告訴しないことを条件にする条項などを盛り込むことで、不起訴処分や刑の軽減、執行猶予判決の確定などが期待できます。
また、示談は異なる意見をもつ2者を合意に至らせる必要があることから、専門家による交渉が欠かせません。
刑事事件の大半は、被害者が加害者を許すことができず、捜査機関に被害を届け出たり告訴をしたりすることで捜査が開始されます。つまり、被害者感情が起訴・不起訴の判断や刑の軽重に大きな影響を与えるわけです。被害届や告訴を行うまでに悪化した被害者感情を、加害者を許すレベルにまで戻すことは並大抵のことではありません。しかし、被害者側に納得してもらえれば、不起訴・執行猶予・刑の軽減などに大きな効果が見込めます。
起訴前であれば、まずは不起訴を目指して示談を行います。不起訴には色々な種類がありますが、その大半は「起訴猶予処分」です。起訴猶予処分とは、罪を犯した事実は間違いないものの、種々の事情を考慮して不起訴が妥当という判断を下されることです。この「種々の事情」の中に示談の成立が含まれており、不起訴処分には示談の成立が大きな意味を持っています。
また、親告罪(被害者からの告訴によって成立する罪)では、被害者が告訴を取り下げることで不起訴処分になる可能性が高まります。被害者に告訴を取り下げてもらうためには、示談の成立が不可欠と言っても過言ではありません。
また、起訴された後でも執行猶予判決を勝ち取ることができれば、実際に禁錮・懲役刑を受ける必要がないため、いち早く社会復帰を目指すことができます。執行猶予判決も、示談の成立が事実上の条件となる場合が多いのです。被害者に対する十分な謝罪の意や被害者側からの宥恕条項が盛り込まれていると、執行猶予の可能性が高まります。
刑事事件は、逮捕・勾留・起訴・裁判と決められた日程で進んでいきます。また、逮捕から処分が決定するまで延々と拘束されてしまうと、その間は社会とのつながりが断たれ、その後の生活に悪影響を及ぼすでしょう。したがって、早急な示談の成立を目指すべきです。示談の成立にはお金よりも反省や謝罪をいかにうまく伝えられるかが肝になるため、専門知識をもった弁護士のアドバイスが必須です。もし、刑事事件の加害者になってしまったのなら、早急に弁護士へ相談してみてください。