万が一、何らかの犯罪行為に関与してしまい、警察から事情をきかれたときの対処法をご存じでしょうか。逮捕され、起訴されてしまうと、長期間にわたって身柄を拘束されることになり、社会生活に大きな支障をきたしてしまいます。そのため、誰もが「逮捕されるのではないか?」と心配になるものです。ここでは、警察や検察から事情をきかれ、逮捕されそうなときの対処法や逮捕の条件などについて解説していきます。
警察は、全ての犯罪に対して、突然「逮捕します」と連絡してくるわけではありません。一定の段階をふみ、まずは「話を聞きたい」といったスタンスとることも珍しくありません。ただし、多くの犯罪では突然の逮捕に踏み切ることも珍しくなく、そのパターンを完全につかむことは難しいのが実情です。ちなみに逮捕は、次のような手順で行われます。
被害届や告訴状、その他の情報から警察が事件の発生を知ると、捜査が開始されます。被害届や告訴状がある場合は、その内容確認から始まり、客観的・主観的な証拠や供述を集めながら捜査を進めます。
警察が逮捕に相当すると判断できるような証拠が集まった段階で、事件が発生した場所を管轄する裁判所に対し、逮捕状を請求します。請求内容に問題が無ければ逮捕状が発布され、被疑者を逮捕する段階に移行します。
裁判所から逮捕状が発布されたら、警察はそれをもって被疑者のもとへ出向き、実際の逮捕に踏み切ります。逮捕後は警察署へ連行され、さまざまな手続き(指紋採取や写真撮影、取調べ)が行われるのが通常です。逮捕にはいくつかの種類があり、それぞれに根拠法が異なります。
事前に事情をきかれている場合、この通常逮捕の可能性が高いです。上で説明したように「逮捕状の請求・発布」という段階を踏む手続きで、日本における「令状主義」を厳格に適用した逮捕形態といえます。
死刑、無期懲役、もしくは3年以上の懲役や禁錮に該当するような重罪に適用されます。逮捕状の発布よりも前に逮捕が行われるため、十分な理由や緊急性を要します。また、逮捕状の請求・発布は逮捕後に行われます。
犯罪が目の前で行われた、もしくは行った直後である場合に、逮捕状を用いず逮捕する形態です。この場合は、当然ながら事前の事情聴取などがありません。
現行犯の場合、一般人でも逮捕することができるとされています。例えば、万引き犯を警備員が現場で発見し、そのまま逮捕するような場合です。別名、「常人逮捕」ともよばれ、このケースでも事前の聴取などはありません。
上記のような逮捕形態のうち「通常逮捕」の場合は、警察が被疑者を警察署に呼び出し、話をきくことがあります。いわゆる「任意出頭」のことですが、この段階では出頭(呼び出し)に応じるかどうかは被疑者の判断によります。ただし、拒否を続けていると「逃亡や証拠隠滅のおそれあり」として逮捕される可能性もゼロではありません。したがって、「任意出頭の連絡がきたら出来るだけ応じ、逮捕に備えた行動をとるべき」といえます。では、どういった行動をとるべきかと言えば、次のようなものです。
被害者のいる事件の場合、通常逮捕の多くは被害者からの被害届や告訴状をベースにするため、被害者との示談交渉を成立させることで逮捕のリスクを小さくすることができます。ただし、いつ逮捕されるかはケースバーケースですから、スムーズな示談交渉が必須です。
仮に「疑いに対してなにも身に覚えがない」というのであれば、絶対に認めてはいけません。なぜなら、一度でも罪を認めてしまうと、後から覆すのは困難だからです。警察官は、あとで裁判になってから否認すればよい、などとアドバイスしてくることがありますが、そのようなことはありません。捜査機関の手持ちの証拠が分からない場合は、黙秘することも検討すべきでしょう。警察からの呼び出し事態に不安や恐怖を感じてしまい、ストレスにつながってしまうようであれば弁護士に相談しましょう。
万が一逮捕されてしまうと、最悪の場合は起訴まで23日、裁判まで2カ月近く身柄を拘束されてしまいます。この間は一般的な社会生活を送ることができず、外部の人間との接触も制限されます。つまり、示談交渉や謝罪を行おうにも、身動きが取れないのです。こういった期間に被疑者に代わって、不起訴を目指して活動できるのは弁護士だけです。警察から事情をきかれ、逮捕が近そうだと感じたならば、必ず弁護士に相談してみてください。
日本の刑事事件は、「起訴」されてしまうと99%以上の確率で有罪となります。しかしながら、刑法犯の起訴率は39%、起訴猶予率は41%程度と「逮捕=有罪」ではないことがわかります。起訴猶予処分となれば、刑事裁判を受ける必要もなく、また前科として記録が残ることもないため、逮捕の予感があるならばまずは起訴猶予を目指して活動すべきです。起訴猶予のためには、逮捕前後における示談交渉や謝罪の意思表示が不可欠ですから、弁護士の力を借りながら逮捕のリスクを最小化していきましょう。