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学校・会社にばれたくない

はじめに

刑事事件を起こしてしまった場合の心配事として多いのが、勤務先や通学している学校などに、事件のことを知られてしまうのではないかというものです。今回はこの点について見てみましょう。

自己申告する必要は原則としてない

まず、法律上、刑事事件を起こした場合に、必ずそれを会社や学校に報告しなければならないというルールはありません。また、弁護士は守秘義務を負っているため、勝手に会社や学校に事件のことを知らせることはありません。このため、勤務先や学校に事件のことを知られたくない場合、黙っていること自体がそれだけで違法となることはありません。
このため、逮捕・勾留された場合でも、家族を通じて欠勤や欠席の連絡をすることにより、ある程度の期間は勤務先や学校に知られずに通すことも、事実上は可能です。もっとも、勾留期間が長引けば、それだけ欠勤・欠席の理由を厳しく問われる可能性があるため、早期に釈放を目指して活動することが重要です。

勤務先や学校に伝えることがやむを得ない場合1 警察の捜査の過程で知られる可能性がある場合

これに対して、被疑者本人から伝えなくても、事件のことが勤務先や学校にいずれ伝わってしまうため、早いうちに事件についてありのままに申告することがやむを得ない場合もあります。
例えば、捜査の過程で、捜査官が勤務先や学校、同僚や同級生などに聞き込みを行うことが予想される事件もあります。他にも、勤務先のロッカーなどに置いている私物を差し押さえるために、勤務先に対する捜索が行われることも、事件によってはあり得ます。こうした捜査が行われる可能性がどの程度ありうるか、弁護人としては捜査の見通しを検討した上で、早めに勤務先や学校に事件について正直に申告して今後の対応を協議すべきかどうか話し合う必要があるといえます。もちろん、あくまで黙っておいてほしいという場合に、弁護人が勝手に知らせることはありません。

勤務先や学校に伝えることがやむを得ない場合2 マスコミ報道

被疑者が有名企業の会社員であったり、有名大学の学生である場合などは、事件がマスコミ報道されることがあり、場合によっては実名が発表されてしまうこともあります。こうなると、勤務先や学校に事件のことが知られてしまうのはやむを得ません。弁護人としても、明らかに誹謗中傷となるような場合はともかく、マスコミ報道自体を差し止めることはできませんし、一度報道された情報を完全に消去することは不可能です。こうした場合には、正直に事件について申告して早期に勤務先や学校と協議する方が、長い目で見ると好ましい場合もあります。
また近年、注意が必要なのはSNSです。特に実名が発表された場合、まとめサイトなどでSNSのアカウントが拡散されてしまう危険性があります。逮捕やそれに伴う報道発表が予想される場合には、これらのアカウントは可能な限り消去するなどする必要があります。

勤務先の対応はケースバイケース

刑事事件を起こしてしまった場合の勤務先対応は、実際のところは勤務先によってまちまちです。例えば、飲酒運転や薬物所持については、大企業ではそれだけで懲戒免職処分となったり、退職を勧奨されたりすることが通常です。公務員の場合は処分基準が公表されており、事件の内容によっては懲戒免職処分を免れない場合もあります。
一方、例えばドライバーが飲酒運転で検挙された場合でも、車の運転をしなくてもよい部署に転属した上で、引き続き雇用を認めてくれるところもありますし、薬物事犯であっても、勤務先の上司が裁判所に情状証人として出廷し、今後の更生に協力することを証言してくれるような勤務先もあります。勤務先に対してどのような対応をすべきなのかは、事件を勤務先に知らせることによってどのような影響があるのかを冷静に予測した上で判断する必要があるといえます。

学校の対応もケースバイケース

大学生の場合、事件の性質にもよりますが、やはり大学の校風に左右されるところが大きいといえます。逮捕された段階で自主退学を求めてくることもあれば、有罪判決が確定するまで処分を行わない大学もあるようです。
高校生の場合、全日制の私立高校などでは、事件を起こして逮捕・勾留された場合、その時点で保護者に自主退学を求めるところが増えています。もっとも、事件の内容によっては、法律上、退学処分にすることができるとは必ずしもいえない場合もあるため、自主退学に応じるかどうかは慎重に検討する必要があるといえます。このため、事前に弁護人に相談してから対応した方が無難です。定時制高校や通信制高校の場合は、事件を起こして逮捕・勾留されたというだけでは、退学を求められることはあまりなく、熱心な先生が少年鑑別所に面会に行ってくれたり、少年審判に出席してくれるような場合もあります。

国家資格など

医師など、職業によっては、刑事事件を起こした場合、刑事の処分とは別に、業務停止などの行政処分が行われ、かつ処分が実名で公表されてしまうことがあります。このような場合には、資格の登録を行政処分より前に自主的に取り消すなどの対策を取る必要が出てくることもあります。

まとめ

このように、刑事事件を起こしてしまった場合の勤務先や学校との調整は、専門的知識に基づくケースバイケースな判断が必要不可欠です。また、事件を起こしてしまったご自身で、これらの点を正確に把握して行動することは難しいと思われます。早期に弁護士に相談することにより、引き続き会社や学校に通い続けられる可能性を探ることが重要だと思います。

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