【速報】福岡県感染拡大防止協力金詐欺事件で有罪判決【コロナ協力金詐欺】
持続化給付金店舗を通常営業していたにもかかわらず、休業又は時短営業したかのように装って、福岡県感染拡大防止協力金を不正に受給した被告人らに対し、福岡地方裁判所(鈴嶋晋一裁判長)は、令和4年2月18日に有罪判決を言い渡した。
判決によると、被告会社Aの経営者である被告人B、及びその経理担当者である被告人Cは、被告会社Aが運営していた複数の飲食店について、実際には通常通り営業していたにもかかわらず、福岡県からの要請に従い、休業したなどと偽って、福岡県感染拡大防止協力金合計1044万円をだまし取ったとされる。他に、被告会社Aが、ホストクラブを無許可営業した風営法違反などの罪でも起訴されていた。
鈴嶋晋一裁判長は、「新型コロナウイルス対策の協力金制度を悪用し、従業員に指示した上で繰り返し不正受給を行っており、犯行態様は巧妙で常習性があり悪質である。同種犯行を抑止するためにも厳罰を以て臨む必要がある」などとした上で、被告人Bについては、「被告会社Aの経営者として決定的な役割を果たしており、執行猶予を付すことは相当でない」として、懲役3年、罰金100万円(他没収、追徴あり)の実刑判決を、被告人Cについては、「従業員に具体的な指示をした上、詐欺の実行行為を自ら行う等、果たした役割は重要」としつつも、自身で被害弁償金を用意して、全額の被害弁償を行ったことなどを考慮し、懲役3年執行猶予4年、罰金80万円の判決を言い渡した。
水野弁護士コメント
持続化給付金詐欺の事案と比較した場合、被害額が1,000万円を超えていれば、首謀者的地位にいる者については、全額を返金しても執行猶予か実刑か、微妙なラインとなる。被告人Bについては、実質的に自らの出費や努力で返金したとは評価できないこと、Aの代表者として首謀者的地位にあるといえること等から見て、実刑はやむを得ないと思われる。これに対して被告人Cは、Bとの比較でいえば従属的な地位に留まると言える上、自らの出費・努力で全額を返金していることを踏まえれば、裁判官としても、実刑判決は躊躇されたところと思われ、限界的な事例であると考えられる。いずれについても、持続化給付金詐欺の事案と比較して、同程度の量刑になっているものと評価できる。
判決文・報道記事提供のお願い
データベースを充実させるため、持続化給付金不正受給に関する判決文や報道記事をご提供いただける方を探しています。
こちらからお願いいたします。
その他のコラム
教職員によるスマホの没収は適法か?
「子どもが学校で「スマホ」を没収されました…進級するまでと言われましたが、スマホは「解約」した方がいいでしょうか?」 このような教師がいるとすれば、言語道断の対応である。 学校の教師には、授業中にスマホで遊ばないようにする限度で一時的にスマホを取り上げる権限はあっても、それ以上にスマホを保護者に返還しないなどの権限はない。 合理的な理由もなく保護者に返さない場合は不法行為が成立しうるし、自分でそのスマホを遊びに使うなどすれ...
京都アニメーション事件の被告人 死刑判決に対する控訴を取下げ
京アニ放火殺人 青葉死刑囚控訴取り下げ 弁護士が無効申し入れ 「京都アニメーション」の放火殺人事件で、1審で死刑判決を受けた青葉真司死刑囚が、みずから控訴を取り下げ、死刑が確定したことについて、弁護士が取り下げを無効だとして大阪高等裁判所に申し入れを行ったことがわかりました。過去には、取り下げが無効と判断され、裁判が再開したケースもあり、裁判所の判断が焦点となります。 青葉真司死刑囚(46)は、6年前の2019年7月、...
最判令和6年12月23日令和5年(受)1583号 ログイン情報の開示範囲
事案の概要 本件は、Instagramによって自己の権利を侵害されたとするXが、権利侵害者Aのアカウントへのログイン情報8回分について、経由プロバイダであるYに対し、プロバイダ責任制限法に基づき発信者情報の開示を求める事案である。 原審は、投稿が令和3年改正法施行前に行われていたことから、改正前の同法4条1項の規定が適用され、ログインした者と投稿者が同一人であることからすれば、いずれのログイン情報も「権利の侵害に係...
週刊東洋経済9月9日号がしょうもない記事である理由
0 はじめに 週刊東洋経済9月9日号で、「揺らぐ文系エリート 弁護士 裁判官 検察官」という記事が掲載されていた。「司法制度の基盤が揺らいでいる。弁護士は「食えない」「AIが代替」と敬遠され、若手裁判官は続々退官。冤罪続きの検察は信頼回復の糸口が見えない。」などとセンセーショナルな冒頭のフレーズで煽っているので、どうせまたしょうもない記事なのだろうと思って読んでみたら、案の定であった。読む価値無しである。厳密に言うと、東京の...
立川ホテル殺人事件 少年の実名報道を繰り返す週刊新潮に抗議する
繰り返される暴挙 東京都立川市にあるラブホテルの一室で、デリヘル嬢が19歳の少年に刺殺され、男性従業員が重傷を負うという事件が発生した。この事件については、当事務所のコラムでも取り扱った。 さて、この事件に関して、週刊新潮6月17日号は、「凶悪の来歴」「70カ所メッタ刺し!立川風俗嬢殺害少年の「闇に埋もれる素顔」」などと題して、少年の実名と顔写真を大々的に掲載した。 週刊新潮が、少年事件において、少年法61条を無視して少...