リコール署名偽造問題
今朝、このようなニュースが飛び込んできた。
署名偽造容疑、事務局長ら逮捕 知事リコール―指紋鑑定で断定・愛知県警
愛知県の大村秀章知事の解職請求(リコール)運動をめぐる不正署名事件で、県警捜査2課は19日、地方自治法違反(署名偽造)容疑で、リコール団体事務局長の元県議、X容疑者(59)=同県稲沢市=ら4人を逮捕した。同課は4人の認否を明らかにしていない。
逮捕容疑は昨年10月下旬ごろ、愛知県知事のリコール署名に関し、県外で雇ったバイトらに代筆させ、署名を偽造した疑い。
県選挙管理委員会の調査では、提出署名の8割超に当たる約36万人分が有効ではないことが判明。同じ筆跡とみられるケースや、既に死亡した住民の名前も含まれていた。同課は、指紋の鑑定結果や事務局の関係者らの証言などを基に一部の署名は偽造されたと断定。自分の名前が使われたと訴える人からも話を聴き、偽造の裏付けを進めたという。
実はこの事件に関しては、私は、今年の3月29日に、「オトナンサー」という媒体から依頼を受けて、法的な論点について解説をしている。全部掲載するわけにも行かないので、少しだけ引用しておく。
大村秀章知事リコール問題で物議…「署名」偽造、どんな法的問題がある?
Q.リコールに向けた署名を偽造すると、どのような罪になるのでしょうか。
水野さん「地方自治法74条の4第2項では条例の制定・改廃に関する署名の偽造について罰則が設けられており、76条4項で、リコールに関する署名についても74条の4第2項を準用することが決められています。従って、地方自治法違反76条4項、74条の4第2項違反(法定刑は3年以下の懲役、もしくは禁錮、または50万円以下の罰金)の罪が成立する可能性があります。
また、私文書偽造(刑法159条)の要件を満たす場合、同罪が成立する可能性もあります。
今回は、立証のしやすい地方自治法76条4項、74条の4第2項違反を用いたものと思われる。
今後の捜査については、署名偽造の首謀者はともかく、お金をもらって署名をしただけのアルバイトにまでどこまで捜査が行われるか、という点も注目される。万一関わってしまったという場合には、逮捕・勾留による弊害を避けるため、すぐに弁護士に相談の上、対応を検討した方がよい。
その他のコラム
続報 持続化給付金詐欺 の判決まとめ6 執行猶予判決の増加は「第2波」の到来を予感
はじめに 持続化給付金の不正受給について、一般の方や、全国で同種事案の弁護人をされる先生方の参考になるよう、持続化給付金の判決について、情報収集を行い、分析を続けている。前回の記事から、さらにいくつかの判決に関する情報を入手した。 これまでの過去記事は以下をご覧いただきたい。 続報 持続化給付金詐欺 の判決まとめ5 背景事情の多様化 20210917 続報 持続化給付金詐欺 の判決まとめ4 徐々に増える実刑...
続報 持続化給付金詐欺 の判決まとめ4 徐々に増える実刑判決 20210804
はじめに 持続化給付金の不正受給について、一般の方や、全国で同種事案の弁護人をされる先生方の参考になるよう、持続化給付金の判決について、情報収集を行い、分析を続けている。前回の記事から、さらにいくつかの判決に関する情報を入手した。 これまでの過去記事は以下をご覧いただきたい。 続報 持続化給付金詐欺 の判決まとめ3 不可解な地域差 20210703 続報 持続化給付金詐欺 の判決まとめ2 20210616 ...
伝聞証拠 ~伝聞証拠禁止の法則と反対尋問権~
百聞は一見にしかずということわざがある。他人から伝え聞くよりも、自分で直接、見た方が遙かに真実に迫ることができるという意味である。 確かに、又聞きというのは誤解を生じやすい。例えば友人Aから、「友人Bが私の悪口を言っている」などと言われても、実際に友人Bに確かめてみると、全然違うつもりで発言したことが、いつの間にか悪口だということにされていた、といった類いの体験は、誰でも一度は経験したことがあるのではないだろうか。最近は...
司法試験への心構え この一矢に定むべし 徒然草とゴールデンカムイに学ぼう
![](https://mfuklocriminaldiffence.com/wp-content/uploads/2023/12/DALL·E-2023-12-19-10.32.33-A-cat-dressed-as-a-samurai-aiming-a-bow-and-arrow-at-a-target.-The-cat-stands-in-a-traditional-Japanese-setting-possibly-a-garden-or-a-dojo-with-el-150x150.png)
1 旧帝大の驚くべき司法試験合格率 私は、九州大学法科大学院で「精神医療と法」という講義を担当しており、ロースクールの学生と交流する機会がある。 そこで驚いたのは、九州大学法科大学院は、司法試験の合格率が全国平均を下回っているということであった。 気になって調べてみると、京都大学、一橋大学、慶應義塾大学は合格率が60%を超えており、全体の合格率は40%程度であるのに対し、九州大学法科大学院は23.4%に留まってい...
仙台弁護士会横領事件 弁護士会で横領が発生するメカニズムを考える【明日は我が身】
![](https://mfuklocriminaldiffence.com/wp-content/uploads/2023/09/s512_chojudaD0031_3-150x150.png)
仙台弁護士会において、事務職員が会の経費約5000万円を横領したとして起訴され、内3500万円の横領が認定されて、懲役4年6ヶ月の実刑判決を受けるという事件が発生した。 https://news.yahoo.co.jp/articles/29cf18ffc8b7976374f9a06695aa9f728e80c436 約3500万円横領 仙台弁護士会元...