一部執行猶予 高相祐一氏の判決から |福岡の刑事事件相談、水野FUKUOKA法律事務所

福岡の刑事事件に強い弁護士

初回相談無料 092-519-9897 24時間、即時無料相談対応
メールでのお問い合わせはこちら

一部執行猶予 高相祐一氏の判決から

タレントの酒井法子さんの元夫である高相祐一氏に対し、令和3年3月24日、東京地裁は懲役1年8月、うち4月について保護観察付執行猶予2年とする判決を言い渡した。

これについては、いくつかの報道記事が判決の意味を正しく理解していないのではないかと思われるので、ここで詳しく解説する。

刑の一部執行猶予制度は、平成28年に施行されたもので、一定の要件(全部執行猶予の場合とかなりの部分が重複する)を満たす場合に、刑の一部を執行猶予するというものである。

これだけでは何のことかわからないのでわかりやすい例を挙げると、「懲役2年、うち半年は執行猶予3年」という判決を受けた場合、何はともあれ、まずは刑務所に行かなければならない。ただ、2年全部を刑務所に行くわけではなく、1年半経過したところで一旦、出所し、残りの半年は、社会の中で3年間様子を見ましょう、というのが一部執行猶予である。

そして、覚醒剤などの薬物事犯の場合は薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律という特則があり、一部執行猶予判決をするための要件が他の犯罪に比べて緩和されている一方で、一部執行猶予の期間中は必ず保護観察に付することになっている。この場合の保護観察は、非行少年などと同様、定期的に保護司と面会するといったやり方が実施されている。

これまでは、刑務所の中で真面目にしていれば、仮釈放で出てくるというのが一般的であった。しかし、仮釈放というのは、行政機関のさじ加減次第であるのに対して、一部執行猶予については、あらかじめ判決で期間を明確に定める点に大きな意義がある。

また、薬物事犯の場合、現状では刑務所に入れても再犯防止のための働きかけが十分になされているとは言えない現状にあり、満期まで服役した後にいきなり社会に戻すよりも、社会内で更生するための「助走期間」を付けることによって、再犯を防止しようとする狙いがある。実際にも、一部執行猶予付の判決が言い渡されるのは、ダルクなどの支援団体の支援を受けることが約束されている事案が多いようである。

ただ、一部執行猶予の場合、執行猶予期間が明けるまでの期間は、執行猶予なしの判決を受けて満期まで服役する場合に比べて、かえって長くなることも多い。前科が多数ある被告人などの場合は、このことを嫌がる場合もあり、一概に早く出所することだけを考えているわけでもなかったりするのが難しいところである。

 

さて、高相氏について報道されているところによると、平成21年に覚醒剤取締法違反で執行猶予付判決を受け、その後、平成28年に薬機法違反(危険ドラッグ)で懲役1年の実刑判決を受けていたというので、同種前科2犯、出所後約3年での犯行ということで、一般的には重い処分が見込まれる。

他方、報道によれば、高相氏は危険ドラッグで服役した後に、ダルクに入寮して更生に取り組んでおり、本件当時はダルクを退寮して、居酒屋でアルバイトをしている矢先のことだったという。今後もダルクの支援を受けることを約束していることが、一部執行猶予につながったものと思われる。

酒井法子さんの事件の時に大きく報道されたことで、世間からは「ノリピーを悪の道に誘い込んだ極悪人」というレッテルを貼られているものの、現在の報道内容を見ている限り、彼もまた薬物を辞めようと苦闘しているうちのひとりなのだと痛感させられる。今回の事件も、バイト先の居酒屋で同僚から罵倒されたことなどをきっかけに、知人から覚醒剤を譲ってもらったということであり、このような形で薬物を再使用してしまうことを「スリップ」と呼び、実際上もしばしば見かける。

私が国選弁護で担当した覚醒剤取締法違反の被告人も、執行猶予中にまた逮捕されたなどの噂を耳にすることは珍しくない。薬物は一度手を付けてしまうと、辞めるのは本当に難しい。ただ、薬物を辞められない人の背景には、その人なりの「生きづらさ」があり、これを適切に発散できないことで、薬物にはけ口を求めているというパターンが多い。周りの支援がプラスになることは間違いない。

その他のコラム

リコール署名偽造問題

今朝、このようなニュースが飛び込んできた。 署名偽造容疑、事務局長ら逮捕 知事リコール―指紋鑑定で断定・愛知県警 愛知県の大村秀章知事の解職請求(リコール)運動をめぐる不正署名事件で、県警捜査2課は19日、地方自治法違反(署名偽造)容疑で、リコール団体事務局長の元県議、X容疑者(59)=同県稲沢市=ら4人を逮捕した。同課は4人の認否を明らかにしていない。 逮捕容疑は昨年10月下旬ごろ、愛知県知事の...

控訴審 新井浩文さんの事例をもとに考える

はじめに 俳優の新井浩文こと朴慶培さんについて、東京高裁は令和2年11月17日、懲役5年の実刑とした第一審判決を破棄し、懲役4年の実刑判決を言い渡した。今回は、刑事控訴審の構造や、本判決に関する検討を行うこととしたい。   控訴審の構造 日本では、3回、裁判が受けられるということは、小学校の社会科の授業などでも習うので、広く一般に知られている。しかし、ボクシングの試合などとは異なり、裁判の第一ラウンドから...

持続化給付金不正受給で緊急の人材募集が行われていたことが発覚

持続化給付金の不正受給(詐欺)について 関わってしまった場合には、すぐに相談を! 持続化給付金100万円「詐欺」福岡で初の逮捕 続報 福岡で持続化給付金詐欺の摘発相次ぐ   既にこれらの記事において、持続化給付金の不正受給についてお伝えしてきた通りである。持続化給付金不正受給は、国に対する100万円の詐欺という重大な犯罪であり、組織的な関与が疑われる事案も少なくないことから、逮捕・勾留されるリ...

一部執行猶予

執行猶予とは、有罪判決の場合に、判決を直ちに執行することなく、しばらく様子を見ることを言う。簡単に言えば、今すぐ刑務所というわけではなくて、しばらくの間、社会の中できちんとやっていけるかどうか様子を見て、大丈夫そうならそのまま社会で暮らしてください、というものである。法律上は、罰金にも執行猶予は可能であるが、実際に使われることは稀である。 さて、平成28年6月1日から、刑の一部執行猶予と呼ばれる制度が始まった。これは「一...

続報 持続化給付金詐欺 の判決まとめ8 役割分担の評価の難しさ

はじめに 持続化給付金の不正受給について、一般の方や、全国で同種事案の弁護人をされる先生方の参考になるよう、持続化給付金の判決について、情報収集を行い、分析を続けている。前回の記事から、さらにいくつかの判決に関する情報を入手した。 これまでの過去記事は以下をご覧いただきたい。 続報 持続化給付金詐欺 の判決まとめ7 小康状態は捜査の遅延か 続報 持続化給付金詐欺 の判決まとめ6 執行猶予判決の増加は「第2波...

刑事事件はスピードが命!
365日24時間即時対応

24時間即時無料相談対応 092-519-9897 弁護士が直接対応 六本松駅から好アクセス

メールでのお問い合わせはこちら