「共同親権導入の結論ありきで議論を進めないでください」賛同人となりました
法制審議会(法相の諮問機関)の家族法制部会で、離婚後の子どもの養育に関し父母双方の「共同親権」導入が検討されていることを巡り、各地の弁護士らが21日、導入は拙速だとする申し入れ書を法務省に提出した。その後、東京都内で記者会見し、ドメスティックバイオレンス(DV)や虐待のケースにどう対応するか話し合われないまま議論が進んでいるとして、危機感を示した。
部会では、父母双方の真摯(しんし)な合意が確認できた場合、共同親権を選べるようにすることを軸に検討している。申し入れ書は、父母間のパワーバランスによっては、合意が事実上「強制」になる可能性があると指摘。また面会交流時に子どもや同居親が虐待に遭うケースがあり、実態を調査すべきだと求めた。離婚事件を扱う弁護士を中心に、約300人が賛同した。
会見にオンラインで参加した40代の女性は、元夫が、発達障害と診断された子どもに厳しく当たることから離婚を選択し、子どもと一緒に暮らしている。共同親権が導入されれば元夫が干渉し、子どもがパニックに陥ることが予想されるとし「子どもの笑顔を守ってほしい」と訴えた。
この申し入れについて、当職も賛同者として名前を連ねている。
申し入れの内容自体は、
法務省への申し入れ「共同親権導入の結論ありきで議論を進めないでください」
に掲載されている。
当職は、児童虐待の事件を取り扱っているところであるが、現在の我が国では、子どもを親の社会的成功の成果物(=トロフィー)のように捉えたり、そうでなくても配偶者や子どもを自らの持ち物であるかのごとく振る舞ったり、未だに家制度に固執して、家族のメンバーを対等な一個人として取り扱わないような成人が少なくない。
そのような支配から離脱しようとする配偶者や子どもを、共同親権という名の下に、網をかけて逃がさないようにする、支配を継続しようと試みる層が一定数存在することには注意が必要である。その根源に、男尊女卑な価値観に由来する女性蔑視の発想があることも見落とされてはならない。
実際、この申し入れを行った呼びかけ人の弁護士に対しては、容姿を馬鹿にする投稿や、子どもをダシに金儲けを企んでいるなどの、心ない攻撃がネット上において加えられている。そのことからも、何を目的とした運動なのかを察するに十分である。
離婚という法的手続において、適正妥当な解決を得るためには、当事者同士が対等に話し合い、場合によっては適宜、裁判手続を利用することが大前提である。しかしそのためには、離婚を巡る民法その他の実体法や、離婚に向けた手続についての、一定の法的知識が必要である。特に、今まで配偶者を見下してきたようなDV・モラハラ気質のある相手方と離婚する場合には、自身で交渉した場合に対等な話し合いなどできるはずもなく、弁護士に依頼することが必要不可欠と言える。また、そもそもの問題として、離婚事件を自ら交渉することは、それ自体が苦痛である。
過去記事 子連れ別居と実力行使による奪取の違い 誤解による萎縮を避けるために
なお、
にも掲載の通り、弁護士については、賛同者募集中である。以下に記事を引用しておく。
なお、弁護士の方で、ご賛同いただける方のお申し込みはこちらからお願いします。
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSc4W3qpUWmr-iyKJ4nezhGU2tDft3D7XSd_ub9NREU64t1aoA/viewform
その他のコラム
最決令和7年5月21日令和7年(し)328号 第1審の有罪判決をした裁判官が当該被告事件の控訴裁判所のする保釈に関する裁判に関与することはできないとした事例
判旨 記録によると、頭書被告事件の控訴裁判所である札幌高等裁判所が、同被告事件の第1審の有罪判決をした裁判官を含む合議体で、保釈請求を却下する決定をし、原審が、申立人からの異議申立てを棄却する決定をしたことが明らかである。 しかしながら、控訴裁判所において、当該被告事件の第1審の有罪判決をした裁判官には、事件について前審の裁判に関与したという、刑訴法20条7号本文の定める除斥原因がある。そして、控訴裁判所のする保釈に関する...
週刊東洋経済9月9日号がしょうもない記事である理由
0 はじめに 週刊東洋経済9月9日号で、「揺らぐ文系エリート 弁護士 裁判官 検察官」という記事が掲載されていた。「司法制度の基盤が揺らいでいる。弁護士は「食えない」「AIが代替」と敬遠され、若手裁判官は続々退官。冤罪続きの検察は信頼回復の糸口が見えない。」などとセンセーショナルな冒頭のフレーズで煽っているので、どうせまたしょうもない記事なのだろうと思って読んでみたら、案の定であった。読む価値無しである。厳密に言うと、東京の...
司法試験への心構え この一矢に定むべし 徒然草とゴールデンカムイに学ぼう
1 旧帝大の驚くべき司法試験合格率 私は、九州大学法科大学院で「精神医療と法」という講義を担当しており、ロースクールの学生と交流する機会がある。 そこで驚いたのは、九州大学法科大学院は、司法試験の合格率が全国平均を下回っているということであった。 気になって調べてみると、京都大学、一橋大学、慶應義塾大学は合格率が60%を超えており、全体の合格率は40%程度であるのに対し、九州大学法科大学院は23.4%に留まってい...
第1回公判期日後の保釈に対する検察官抗告
弁護士になってから、勾留請求却下や、第1回公判期日前の保釈許可決定に対して、検察官が準抗告をしてきたことは数えるほどしかない。その事案も、器物損壊といいながら実際にはストーカーであるとか、共犯者が相当数いる詐欺事件で比較的早期に保釈が認められた事案なので、検察官はかなり慎重に準抗告するかどうかを検討しているものだと思っていた。 しかし、第1回公判期日後の保釈許可決定(当然、第1回公判期日前では保釈が通らなかった事案)について...
少年法改正に関する問題点
これまでの議論の経過 現在、少年法改正の議論が進められているが、これは元々、民法の成人年齢引き下げや、選挙権を与える年齢を18歳としたことに伴って、少年法の適用年齢も引き下げるべきではないかという議論に端を発している。しかし、これに対して反対意見が根強かったため、最終的に、妥協の産物として、①18歳、19歳の少年については逆送の範囲を拡大し、②逆送されて刑事事件となった場合に実名報道を解禁する、という内容で改正がなされようと...





