共犯者同士の弁護人 「真に恐るべきは、有能な敵ではなく、無能な味方である」 |福岡の刑事事件相談、水野FUKUOKA法律事務所

福岡の刑事事件に強い弁護士

初回相談無料 092-519-9897 24時間、即時無料相談対応
メールでのお問い合わせはこちら

共犯者同士の弁護人 「真に恐るべきは、有能な敵ではなく、無能な味方である」

「真に恐るべきは、有能な敵ではなく、無能な味方である」とはナポレオンの格言とされる。味方にこそ要注意ということだ。

これは刑事事件においても変わらない。

例えば、ある事件について共犯者AとBが起訴されているとする。AとBが同じ弁護士に依頼してきた場合、(1)依頼を受けてもよいか、(2)依頼を受けるべきかというテーマがある。

(1)については、「一律に禁止されていない」というのが一応の回答である。このため、特に深く考えずに受任する弁護士もいるようである。

しかし、私は、(2)に関して、基本的にお断りしている。上記の事例であれば、双方とも断るか、一方については別の弁護士を紹介するようにしている。

弁護士職務基本規程では、利益相反がある場合に事件を受けてはいけないとされている。例えばお金を貸した人と借りた人、ある事件の加害者と被害者の事件を同時に受けることはできない。片方の味方をすれば片方の敵に回ることが明らかであるからである。

しかし、共犯者間においては、明確に利益相反が生じているとは限らない。このため、共犯者同士の事件を受けること自体は、一律に禁止されてはいないのである(1)。

しかし、本当にそうだろうか。

世の中、味方同士で争い始めるというのは日常茶飯事である。刑事事件の共犯者同士についても、お互いに責任をなすりつけ合うことはよく見られる光景である。たとえ、弁護士に依頼した時点では足並みが揃っていたとしても、人間というのは究極的には自分の利益を追求するものであるから、自己保身のために味方を裏切るというのは仕方のないことだ。

つまり、共犯者間には、潜在的に利益相反があるのである。

共犯者同士の場合、量刑を決める要素としては、誰が重要な役割を果たしたか(首謀者か)や、利益の分配はどうだったか、誰が言い出したかなどが重視されることが多い。これらは、共犯者同士で言い分が食い違うと、お互いに自分の役割を過小評価し、他の共犯者の役割を過大評価することになるから、まさに利益が相反することになる。まして、否認事件(例えば、ABが窃盗の共謀として起訴され、AはBとグルになって泥棒したことを認める一方、Bは、Aにいわれてついていっただけで、泥棒をするなんて夢にも思わなかったと弁解するような場合を想像してほしい)の場合は、正面から利害が衝突することになる。

そして、当初は利益相反がなかったものの、途中から仲間割れを始めた場合、弁護人としては、全員の弁護人を辞任するのが原則である。従って、共犯者同士の依頼は、「途中で仲間割れが始まって全面的に手を引かざるを得なくなるリスク」を弁護人も被疑者・被告人も負っていると言え、かかるリスクを勘案した場合には、お互いのために、原則として断るという選択を取らざるを得ない。

私が見聞きしている例だと、例えばAB双方の弁護人を引き受ける代わりに、弁護士費用はABそれぞれを受任した場合よりもいくらか割引する、といった形で、共犯者の弁護活動を受任する弁護士もいるそうである。しかしながら、上記のように、そこには大きなリスクがあることを意識しておくべきである。

刑事弁護人というのは、最後まで被疑者・被告人のために活動する使命を負っている。ひとたび他人のことが頭をよぎるようでは、その時点で最善の弁護活動はできない。共犯者同士の事件の場合は、特に注意が必要である。

 

【絶対的権力は絶対に腐敗する】ジャニーズ調査報告書を読んだ感想【圧倒的独裁者】
https://youtu.be/vO2WJwqkOCU
※ダイジェスト版 【絶対的権力は絶対に腐敗する】ジャニーズ調査報告書を読んだ感想【圧倒的独裁者】
https://youtu.be/wA52q3FW8dU

事務所ホームページ

刑事事件特設サイト
https://mfuklocriminaldiffence.com/
医療事件特設サイト
https://mfuklomedical.com/
離婚事件特設サイト
https://mfuklorikon.com/
Twitter
https://twitter.com/mizuno_ryo_law
Instagram
https://www.instagram.com/mizuno_ryo_…
お問い合わせフォーム
医療 http://u0u0.net/YcJ9
刑事 http://u0u0.net/TIMP
交通事故 http://u0u0.net/WaqQ
離婚 http://u0u0.net/wtgL
債務整理 http://u0u0.net/RZH3
その他 http://u0u0.net/UNfR
LINE登録無料 https://page.line.me/mizunofukuoka

 

 

その他のコラム

教職員によるスマホの没収は適法か?

「子どもが学校で「スマホ」を没収されました…進級するまでと言われましたが、スマホは「解約」した方がいいでしょうか?」 このような教師がいるとすれば、言語道断の対応である。 学校の教師には、授業中にスマホで遊ばないようにする限度で一時的にスマホを取り上げる権限はあっても、それ以上にスマホを保護者に返還しないなどの権限はない。 合理的な理由もなく保護者に返さない場合は不法行為が成立しうるし、自分でそのスマホを遊びに使うなどすれ...

保釈にまつわる話~よくある誤解~

はじめに 衆議院議員の河井克行さんについて、東京地裁は令和3年3月3日に保釈を認める決定を行った。 今回は、保釈に関して、一般の方がしばしば誤解されている点を説明しておきたい。そんなの言われなくても知ってるよ!という方にはつまらない内容になるので、あらかじめご容赦いただければと思う。   ①保釈請求は何度もできる 保釈は一発勝負ではない。実際、河井克行さんの場合は5回、妻の河合案里さんの...

持続化給付金の不正受給(詐欺)について

はじめに 新型コロナウイルスにより、売上高が減少した個人事業主などを救済するための、持続化給付金という制度が悪用されている。困ったことに、犯罪組織などの反社会的集団が、言い金儲けの手段として目を付け、普段は犯罪とは無縁な一般人を言葉巧みに誘い、犯罪に走らせるという出来事が全国で無数に発生している。今回は、持続化給付金の不正受給について、手口や、万一関わってしまった場合の問題点、国の対応に対する疑問などについて述べていきたい。...

控訴取り下げ続報

先日投稿した、上訴権放棄・上訴の取下げという記事に関して続報である。報道によれば、大阪高裁は令和2年11月26日に、被告人による二度目の控訴取り下げを有効であると判断し、控訴審の手続を行わないと決定した。これに対して、弁護人が同年11月30日に異議申立を行ったとのことである。 異議申立の結果によっては、弁護人若しくは検察官が最高裁に特別抗告することも考えられ、本件の経過は見逃せない。一部報道によると、被告人は二度目の控訴...

控訴審 新井浩文さんの事例をもとに考える

はじめに 俳優の新井浩文こと朴慶培さんについて、東京高裁は令和2年11月17日、懲役5年の実刑とした第一審判決を破棄し、懲役4年の実刑判決を言い渡した。今回は、刑事控訴審の構造や、本判決に関する検討を行うこととしたい。   控訴審の構造 日本では、3回、裁判が受けられるということは、小学校の社会科の授業などでも習うので、広く一般に知られている。しかし、ボクシングの試合などとは異なり、裁判の第一ラウンドから...

刑事事件はスピードが命!
365日24時間即時対応

24時間即時無料相談対応 092-519-9897 弁護士が直接対応 六本松駅から好アクセス

メールでのお問い合わせはこちら