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続報 持続化給付金詐欺 の判決まとめ8 役割分担の評価の難しさ

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はじめに

持続化給付金の不正受給について、一般の方や、全国で同種事案の弁護人をされる先生方の参考になるよう、持続化給付金の判決について、情報収集を行い、分析を続けている。前回の記事から、さらにいくつかの判決に関する情報を入手した。
これまでの過去記事は以下をご覧いただきたい。
続報 持続化給付金詐欺 の判決まとめ7 小康状態は捜査の遅延か
続報 持続化給付金詐欺 の判決まとめ6 執行猶予判決の増加は「第2波」の到来を予感
続報 持続化給付金詐欺 の判決まとめ5 背景事情の多様化 20210917
続報 持続化給付金詐欺 の判決まとめ4 徐々に増える実刑判決 20210804
続報 持続化給付金詐欺 の判決まとめ3 不可解な地域差 20210703
続報 持続化給付金詐欺 の判決まとめ2 20210616
【速報】 持続化給付金詐欺 の判決まとめ 20210429前回から約1箇月を経過し、新たな事案が集積されてきたため、さらに分析を行いたい。
報道発表から読み取れる範囲で一覧表を作成しており、役割や被害弁償、分け前などについては一部、推測に渡るものも含まれている。また、本稿掲載時点で検察官による求刑まで行われ、判決言渡未了のものについても参考のために掲載した。
ちなみに、これらの判決の中で、当職が弁護人として関与しているものは存在しない。

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判決内容

前回から5件(判決5件)増加し、執行猶予付判決が3件、実刑判決は2件となった。5件のうち、2件が高裁所在地の地方裁判所、1件がそれ以外の地方裁判所本庁、残り2件は支部である。

判決の分析

判決56及び判決57は、同一事件の共犯者に関するものである。判決56では16件、判決57では8件が起訴されており、いずれについても実刑が求刑されている。これに対して、判決では、いずれも計画立案に関与しておらず、主犯格の手足に過ぎなかったことなどを理由として、執行猶予付判決が選択されている。いずれも勧誘役とされているものの、勧誘行為が定型的・単純なものであり、共犯者間における役割として軽いと評価されたものと思われる。
判決58は現職の暴力団員に関する事例である。持続化給付金詐欺6件の他に、覚醒剤の営利目的譲渡も起訴されているため、量刑はこの点も含めて分析する必要がある。覚醒剤営利目的譲渡がなかった場合の量刑について、合理的に推測することは困難であるため、あくまで参考事例である。もっとも、持続化給付金詐欺が、一部において暴力団の資金源となっていることを実証するものであり、他の共犯者に関する審理がどうなっているか等気になるところである。
判決59は、8件の持続化給付金詐欺の事例で、実刑判決が選択されている。被告人は指南役であるとされているところ、マニュアルを作成するなど、犯行において中心的な役割を果たしたことなどが指摘された上で、実刑が選択されている。判決56及び判決57とは対照的である。マニュアルの作成は、持続化給付金不正受給の手段を標準化・効率化するものであるため、スキームの中核的部分を占めると考えられ、これに関与したことは共犯者間の役割としては重要なものと判断されたものと思われる。もっとも、そもそもの持続化給付金不正受給の手口自体が極めてシンプルなものであり、さしたる専門知識がなくとも不正受給を行うこと自体は比較的容易に行い得るものであったことを踏まえると、マニュアルの作成をそこまで重視することには疑問の余地もある。単にマニュアルの作成に携わったというだけではなくて、当該マニュアルの内容や、他の共犯者に配布され、参考にされた程度等を丁寧に検証する必要があるのではないかと思われる。
判決60は、5件の持続化給付金詐欺の事例において、執行猶予付判決が選択されている。勧誘役であると認定されており、役割としてそこまで重要なものではないと考えられたことや、全額が返還見込みであることなどが考慮されたものと思われ、限界的な事例に属すると考えられる。

年齢・職業

20代が32人、30代が13人、40代が8人、50代が2人、60代が1人、70代が1人であり、平均は31.84歳と、依然として若年者が圧倒的に多く、平均年齢も低い傾向にある。参考までに、平成30年度の一般刑法犯における高齢者の割合は21.7%である。このことから見ても、持続化給付金の不正受給は、主に若い世代による犯行であることが裏付けられると言える。

役割分担の評価の難しさ

持続化給付金詐欺においては、発案し、スキームを考案する首謀者的地位から、単に自己名義で申請を行うに過ぎない末端の者まで、様々な役割分担が行われることが通例である。明らかに首謀者である、あるいは明らかに末端であると認定される者については、量刑における評価はさほど困難ではない。しかし実際には、申請名義人を勧誘する役割や、申請の仕方を指南する役割、申請書類を作成する役割など、両者を媒介する中間的な地位を占める者も多数あり、これらの者については、同じ「勧誘役」「指南役」「書類作成役」といっても関与の程度は千差万別であることから、共犯者間の役割については、個別に検討する必要が大きいと考えられる。
例えば勧誘役の場合、勧誘のノーハウが自ら有していたものか、それとも主犯格から指示されたとおりに勧誘行為をしただけかにより、勧誘により名義人を集められる規模や効率は大きく異なってくるものと思われ、より多数の者を効率的に勧誘できる方法をとっていたり、主体的に勧誘行為を行っていたりする者については、役割としては重要であると評価されることになろう。これに対して、とにかく頭数をそろえてくるように言われ、SNS等で知り合いに手当たり次第にメッセージを送ったに過ぎないような場合には、どちらかというと従属的な立場として評価されることになろう。指南役、書類作成役等についても同様であり、行為者自身の主体性や創意工夫の大小により、法益侵害の危険性も異なってくるため、これが量刑にも反映されるものと思われる。
また、重要な役割ほど他人による代替が困難である以上、受領する分け前も大きくなる傾向にあると思われ、この点において分け前の大小は役割の重要性を推測するひとつの基準となり得ると思われる。しかしながら、この種の事案における共犯者間の利益分配はルーズに決められていることが多く、客観的な基準があるわけではないから、分け前の大小を過度に重要視することには慎重であるべきであろう。

今後の見通し

裁判例による事案の集積に伴い、一口に○○役といっても、共犯者間における役割の重要性については、ケースバイケースに丁寧な検討を行う必要があることが示唆されている。
複数人が関与している事案については、被疑者から共犯者間の関係性や組織内の人員構成、各人の役割分担を丁寧に聴取した上で、被疑者自身が分担した行為について、組織内でどのような位置づけであり、また持続化給付金詐欺にどのような形で寄与しているのか、被疑者自身の主体性や創意工夫、裁量がどの程度存在していたのか、といった点を、慎重に検討する必要があるといえよう。また、この点について不利な供述調書が作成される可能性を踏まえると、特に複数の事案による立件が想定される場合には、事実関係自体に大きな争いがない場合であっても、どの程度取り調べに応じるかについて、慎重な検討を要するものと思われる。

まとめ

前回も記載したとおり、持続化給付金不正受給は、初犯でも実刑の可能性がありうる事件類型である。
また、他の犯罪類型と比較すると、相応の学歴や社会的地位があり、家族や安定した勤務先を有する者がこの犯罪に手を染めていることも珍しくない。こういう場合、突如として逮捕・勾留され、長期間にわたって接見禁止となることにより、家族や仕事に与える影響は甚大であり、被疑者段階あるいは起訴後の保釈段階の弁護活動も重要になってくる。これらについては機動力が求められ、弁護士によって対応が異なってくるため、依頼する弁護士は慎重に選んだ方がよい。安易に、全国展開しているとか弁護士の人数が多いとか元検事の弁護士がいると言うだけで決めるというのは、あまりおすすめしない。
本稿掲載時点で60件の裁判例を紹介しているところ、上述の通り、役割分担の評価等、量刑に重要な影響を与える事情について、ますます多様化が見られるところであり、単純な比較だけでは量刑の差異を説明できないと感じられる事案も増えている。これらについては、可能な限り判決文自体を入手した上で詳細な分析を行う予定であるため、判決文の提供等にご協力いただければ幸いである。

ご依頼を検討中の方に~当事務所の方針

最後に、最近、問い合わせを受けることが多くなっているので、持続化給付金の不正受給に関する依頼を検討されている方に、当事務所の基本的な方針をお伝えしておきます。

被疑者段階

被疑者段階での依頼については、警察署等への接見が必要となってくるため、ある程度の地理的制約があります。このため、あまりに遠方の事件についてはお断りすることもあります。但し、現地に知り合いの弁護士がいる場合には、共同で受任して、接見は専ら現地の先生にお願いするという形で受任することは可能ですので、まずはお問い合わせいただければと思います。
当職が受任した場合、遠方に接見に行く場合には、交通費実費と日当をいただきます。日当については、距離や所要時間などによって異なってくるので、詳細は個別にお問い合わせください。
なお、正式に依頼するかどうかは未定であるものの、とりあえず一度接見に行った上で、今後の弁護方針に関するセカンドオピニオンを提供するということも可能です。こちらについては、日程が合う限りにおいて、全国対応が可能です。弁護士費用及び日当、交通費については、お問い合わせください。

被告人段階 第一審

起訴後からでも、勿論ご依頼は可能です。この場合、被疑者段階よりは接見頻度も少ないことが想定されるため、被疑者段階よりは、遠方のご依頼でもご負担は少ないと思います。保釈により釈放された場合には、テレビ電話等での打ち合わせも可能です。弁護士費用については、件数や認否、事案の複雑さによって変わってきますので、個別にご相談下さい。
被疑者段階同様、セカンドオピニオンのご依頼も歓迎です。この場合は、現在、依頼している弁護人から、事件に関する記録を入手した上でご相談下さい。

被告人段階 控訴審 上告審

控訴審、上告審のご依頼も可能です。
まず、第一審の判決謄本等を検討した上で、控訴に関する見通しについて意見を述べるという形でご依頼いただくことが可能です。
控訴審は、通常の事案であれば、弁論を1回開いて結審し、第2回で判決言渡しになることが多いため、遠方の事案でも、期日のために出廷する回数は2回となることが多いです。ただ、接見や保釈請求等の関係で出張が必要となることもあります。

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