【速報】 持続化給付金詐欺 の判決まとめ 20210429
はじめに
持続化給付金の不正受給を巡る詐欺罪について、公判請求され、判決が相次いで言い渡されている。そこで、本稿では、令和3年4月28日までの報道記事や判例データベースをもとに、持続化給付金不正受給に関する裁判例の傾向を検討することにした。
報道発表から読み取れる範囲で一覧表を作成しており、役割や被害弁償、分け前などについては一部、推測に渡るものも含まれている。また、本稿掲載時点で検察官による求刑まで行われ、判決言渡未了のものについても参考のために掲載した。
ちなみに、これらの判決の中で、当職が弁護人などとして関与しているものは存在しない。
一覧表はこちら
判決内容
執行猶予付判決が13件、実刑判決が1件であった。
これだけを見ると、多くの事件で執行猶予が選択されているようにも思われる。しかしながら、現在、判決が出ている者の多くは、ほとんど単独犯に近い者、自分と家族名義などで小規模に不正受給を行った者、組織の中では末端に属する者などが中心であり、詐欺グループの中核者や首謀者に関する事例は含まれていない。首謀者的地位にある者は、起訴される件数も多いため、現時点では公判が進行中であり、判決はこれから、という事案が多いのではないかとも思われる。
他方で、後記の通り年齢が若いことや、前科前歴のない者も多いこと、一部であれ被害弁償を行っている事案も散見されることなどから見ると、量刑としては総じて重い印象を受ける。
執行猶予になった事例を分析すると、最も軽いもので懲役1年6月執行猶予3年、最も重いもので懲役2年6月執行猶予5年であり、懲役2年としたものはなかった。懲役1年6月執行猶予付となった事例は、全件が被害額100万円、すなわち1件のみ起訴されていると思われる事例であり、単独犯の事例や、他人に勧誘されて不正受給を行い、手数料を支払った事例であると思われる。被害額が少なく、また共犯事件では、共犯者に比較して従属的な立場にあることが、刑を軽くした事情なのではないかと思われる。
これに対して、懲役2年6月とされた事案は、1件を除き、全て被害額が200万円~300万円とされており、自ら申請するだけでなく、他人を勧誘するなどしている事案である。被害額100万円とされた事例は、現職の行政書士によるものであり、専門知識を悪用した点が重く見られた可能性がある。
実刑とされた事例は、被害額300万円であるが、被害弁償の状況などは不明である。20歳という年齢から見て、前科があるとは考えにくいため、全く被害弁償をしていなかったという可能性もある。
これらをまとめると、現時点では、単独犯や他人から勧誘されて自ら不正受給をした者については、懲役1年6月執行猶予3年程度、他人を勧誘するなどして、合計2-3件の不正受給をした者については、懲役2年6月執行猶予4年程度の量刑がなされることが多いものと、一応、分析できる。
但し、既に述べたように、これから先は、起訴される事件の件数が多い者、詐欺グループの中核者に当たる者に関する判決が出てくる可能性があるため、量刑の傾向が重くなるものと思われる。また、現時点でも、被害額300-400万円で検察官が懲役3年6月、すなわち実刑相当の求刑をしている事例があり、これに対する裁判所の判断が注目される。
年齢・職業
20代が12人、30代が5人、40代が1人であり、平均は27.7歳と、若年者が圧倒的に多かった。高齢者は自営業者に仕立てにくいこと、持続化給付金はオンラインで申請するのが原則であること、申請名義人の勧誘にはSNSが用いられることなどから、高齢者には縁遠い類型なのではないかと思われる。
また、無職者は少数派であり、大学生、会社員を始め、公務員や行政書士など、様々な職業の者が含まれていた。不正受給には確定申告などに関する一定の知識が必要であるため、このような結果になったのではないかと思われる。
まとめ
このように、持続化給付金の不正受給は、若年者であって、大学生や定職に就いている者というように、本来であれば犯罪とは無縁の生活を送っている者が多数、関与していることに大きな特徴がある。しかしながら、その量刑は、最も軽いものでも懲役1年6月執行猶予3年であり、これは初犯の覚醒剤の自己使用などと同程度であるから、決して軽いものではない。また、前科前歴がないと思われる事案でも、実刑が求刑されているものもあり、被害額や共犯者間での役割によっては、初犯でも実刑となる可能性が十分あり得る事案であると考えられるところである。
従って、公判において最大限、有利な判決を得るには、早期に弁護士に相談して、弁護人による適切な弁護活動が行われることが極めて重要であり、事案の性質上、実刑判決が見込まれる場合には特にこのことが当てはまる。
また、本稿では分析できていないものの、被告人が公判のどの時点で保釈されるかといった、身体拘束関係についても、やはりきちんとした弁護活動を行う必要性が高いのではないかと思われる。

その他のコラム
教職員によるスマホの没収は適法か?
「子どもが学校で「スマホ」を没収されました…進級するまでと言われましたが、スマホは「解約」した方がいいでしょうか?」 このような教師がいるとすれば、言語道断の対応である。 学校の教師には、授業中にスマホで遊ばないようにする限度で一時的にスマホを取り上げる権限はあっても、それ以上にスマホを保護者に返還しないなどの権限はない。 合理的な理由もなく保護者に返さない場合は不法行為が成立しうるし、自分でそのスマホを遊びに使うなどすれ...
持続化給付金不正受給に関する続報
令和3年1月19日に、続報 福岡で持続化給付金詐欺の摘発相次ぐという記事で、福岡県で持続化給付金不正受給による摘発が相次いでいることをお伝えした。 今回、さらに、福岡県警が同様の事案を摘発した。 こちらをご覧いただきたい。 持続化給付金詐欺の疑い 19歳の少年ら4人逮捕 福岡県 逮捕段階ということもあるので、名前については*に置き換えた。 詐欺の疑いで逮捕されたのは、福岡市城南区に住む建設作業...
安易な接見禁止を防ぐ 最決令和7年8月14日令和7年(し)第672号
判旨 本件被疑事実の要旨は、「被疑者は、正当な理由がないのに、令和7年5月9日午後7時28分頃から同日午後7時33分頃までの間、ひそかに、愛媛県西予市内のアパートに居住する女性に対し、同アパートの浴室窓から携帯電話機を浴室内に向けて差し入れ、同人の性的な部位等を撮影しようとしたが、同人に気付かれたためその目的を遂げなかった」というものである。 被疑者は、令和7年8月1日に勾留され、原々審は、同日、検察官の請求により、被疑者...
【ニュースの感想】除名になった弁護士を調べて思ったこと
はじめに また衝撃のニュースが飛び込んできた。 強制わいせつ事件など示談金1316万円を着服、弁護士を除名処分…第一東京弁護士会 強制わいせつや盗撮事件などの被害者から示談交渉の依頼を受け、加害者側から計約1300万円を受け取ったのに着服したなどとして、第一東京弁護士会は23日、同会所属の岸本学弁護士(51)を除名の懲戒処分とした。 発表によると、岸本弁護士は2021~23年、強制わいせつや盗撮、痴漢などの性被害を受け...
【速報】東京地判令和7年3月17日令和4年(ワ)31483号名誉毀損・プライバシー侵害を認定
【拡散希望】 正義は勝つ‼️ 「トランクに子どもを入れて誘拐した」との記事を書かれたマダム・フィショ氏が、プレジデント社と牧野佐千子氏を訴えた損害賠償等請求訴訟で、東京地裁は、本日、名誉毀損・プライバシー侵害を認定し、被告らに110万円の支払いと記事の削除を命じる判決を下した。 pic.twitter.com/FictQUqePd — 弁護士神原元 (@kambara7) March 1...





