【速報】持続化給付金詐欺で初の弁護士逮捕との報道
衝撃的なニュースが飛び込んできた。
弁護士を持続化給付金など不正受給容疑で逮捕 広島県警
新型コロナウイルス対策の国の「持続化給付金」や「家賃支援給付金」計約590万円をだまし取ったとして、広島県警は23日、広島弁護士会の弁護士、X容疑者(47)=A市=ら2人を詐欺の疑いで逮捕した。捜査2課によると、持続化給付金の不正受給容疑で弁護士が逮捕されるのは全国で初めて。
他に逮捕されたのは会社役員、Y容疑者(56)=B市。捜査2課は2人の認否を明らかにしていない。
X容疑者ら2人の逮捕容疑は、X容疑者が設立したホテル経営会社が新型コロナの影響で収入が減ったなどとして2020年10~12月に虚偽申請。同11月に持続化給付金200万円、12月に家賃支援給付金約390万円をだまし取ったとしている。【根本佳奈、安徳祐】
毎日新聞令和4年6月23日付報道
逮捕段階のため、氏名等は伏せ字とした。
報道を見る限り、自らホテル経営会社を設立し上、虚偽の申請を行って持続化給付金を請求した上、家賃支援給付金も不正に受給しているようである。手口としては、以前、問題となった経済産業省の現職官僚の事案と同様である。
そこでも紹介したように、家賃支援給付金を受給するためには、
1 賃貸借契約書
2 直近3ヶ月分の賃料の支払を証明する書類
3 本人確認書類
4 売上高の減少を証明する書類
が必要であるため、Y氏は、X氏の設立したホテル経営会社に物件を賃貸する賃貸人役を引き受けていたのではないかと推察されるところである。
ところで、Y氏の実名をインターネットで検索すると、広島県にあるとある不動産会社(株式会社S)がヒットする。同社のウェブサイトには、「弁護士事務所の職員経験を活かし、任意売却・競売入札・相続問題等の売買事例の経験が豊富で様々な取引アドバイスが可能です」と謳われている。X弁護士とY氏とがどのような関係性にあったのかは不明であるものの、S社のウェブサイトは、私のような弁護士から見ると、不審な点があるように思われるところである。
また報道によれば、X弁護士は、法テラスの相談料5,500円を不正に受給したとして、令和4年5月に業務停止の懲戒処分を受けていたとされている。だとすると、事務所の運転資金など、金銭的に困窮していたことも推察されるところである。逆に言うと、よほど金に困っていなければ、5千円程度のために業務停止になるようなリスクを負うことは通常しない。
上記のような手口から見て、余罪が存在する可能性も否定できないところである。今後の動向に注目したい。
その他のコラム
リコール署名偽造問題
今朝、このようなニュースが飛び込んできた。 署名偽造容疑、事務局長ら逮捕 知事リコール―指紋鑑定で断定・愛知県警 愛知県の大村秀章知事の解職請求(リコール)運動をめぐる不正署名事件で、県警捜査2課は19日、地方自治法違反(署名偽造)容疑で、リコール団体事務局長の元県議、X容疑者(59)=同県稲沢市=ら4人を逮捕した。同課は4人の認否を明らかにしていない。 逮捕容疑は昨年10月下旬ごろ、愛知県知事の...
仙台弁護士会横領事件 弁護士会で横領が発生するメカニズムを考える【明日は我が身】

仙台弁護士会において、事務職員が会の経費約5000万円を横領したとして起訴され、内3500万円の横領が認定されて、懲役4年6ヶ月の実刑判決を受けるという事件が発生した。 https://news.yahoo.co.jp/articles/29cf18ffc8b7976374f9a06695aa9f728e80c436 約3500万円横領 仙台弁護士会元...
週刊東洋経済9月9日号がしょうもない記事である理由

0 はじめに 週刊東洋経済9月9日号で、「揺らぐ文系エリート 弁護士 裁判官 検察官」という記事が掲載されていた。「司法制度の基盤が揺らいでいる。弁護士は「食えない」「AIが代替」と敬遠され、若手裁判官は続々退官。冤罪続きの検察は信頼回復の糸口が見えない。」などとセンセーショナルな冒頭のフレーズで煽っているので、どうせまたしょうもない記事なのだろうと思って読んでみたら、案の定であった。読む価値無しである。厳密に言うと、東京の...
続報 持続化給付金詐欺 の判決まとめ8 役割分担の評価の難しさ
はじめに 持続化給付金の不正受給について、一般の方や、全国で同種事案の弁護人をされる先生方の参考になるよう、持続化給付金の判決について、情報収集を行い、分析を続けている。前回の記事から、さらにいくつかの判決に関する情報を入手した。 これまでの過去記事は以下をご覧いただきたい。 続報 持続化給付金詐欺 の判決まとめ7 小康状態は捜査の遅延か 続報 持続化給付金詐欺 の判決まとめ6 執行猶予判決の増加は「第2波...
最決令和7年2月26日令6(行フ)1号 タクシー運賃の法規制の在り方

事案の概要 特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法は、タクシーの供給過剰に対処するため、国土交通大臣が「特定地域」「準特定地域」を指定し、道路運送法所定のタクシー運賃にかかる規制の特例を認めるものである。 Xはタクシー事業者であるところ、特措法により令和4年10月11日に国土交通大臣が料金の引き上げを行った(適用は同年11月14日)のに対し、引き上げ後の下限を下...