続報 持続化給付金詐欺 の判決まとめ12 新たな展開 |福岡の刑事事件相談、水野FUKUOKA法律事務所

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続報 持続化給付金詐欺 の判決まとめ12 新たな展開

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はじめに

持続化給付金の不正受給について、一般の方や、全国で同種事案の弁護人をされる先生方の参考になるよう、持続化給付金の判決について、情報収集を行い、分析を続けている。前回の記事から、さらにいくつかの判決に関する情報を入手した。
これまでの過去記事は以下をご覧いただきたい。
続報 持続化給付金詐欺 の判決まとめ11 重い量刑が続く
続報 持続化給付金詐欺 の判決まとめ10 実刑と執行猶予の狭間で
続報 持続化給付金詐欺 の判決まとめ9 第一波と第二波の端境期
続報 持続化給付金詐欺 の判決まとめ8 役割分担の評価の難しさ
続報 持続化給付金詐欺 の判決まとめ7 小康状態は捜査の遅延か
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続報 持続化給付金詐欺 の判決まとめ2 20210616
【速報】 持続化給付金詐欺 の判決まとめ 20210429
掲載済のもので判決原文を入手したものについて、今回は検討する。
報道発表から読み取れる範囲で一覧表を作成しており、役割や被害弁償、分け前などについては一部、推測に渡るものも含まれている。また、本稿掲載時点で検察官による求刑まで行われ、判決言渡未了のものについても参考のために掲載した。
ちなみに、これらの判決の中で、当職が弁護人として関与しているものは存在しない。

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判決内容

判決53、判決56・57、判決60、判決61、判決67、番外1・2を入手した。

判決の分析

判決53は、3件の持続化給付金詐欺の事案である。判決では、被告人の役割は「上位者からの指示を伝えたり、申請に係る整理表の更新作業を依頼」するものと認定されており、従属的な立場である。判決では、犯情について、「被告人において、本件に係る活動に関与を続ける中で未必の故意を有するに至り、立場としても共犯者からの指示に従った面が強いこと、自らの金銭的利益を積極的に欲することなどはしておらず、現にこれを得た事実もないこと、本件各犯行のうち1件については全額返還が完了し、うち1件についても全額返還の手続が進行中であって、被害回復の見込みが十分あることなどの事情」を指摘した。実際にも、女性の被告人が、首謀者の男性から言いくるめられて犯行に加担した側面があるようである。その上で、一般情状として「家族及び稼働先の関係者が今後被告人を監督する旨を公判廷にて誓約したこと、被告人に前科前歴はなく、本件について反省しており、保釈後にボランティア活動に従事したり贖罪寄付を行ったりしていること、相応の期間身体拘束を受けたこと」も指摘している。もっとも、前二者については正当な指摘であるものの、保釈後にボランティア活動をしたことや、相応の期間身体拘束を受けたことを一般情状として考慮することには疑問もある。
結論としては、首謀者的地位にない3件の事案であり、全額返還見込みであることを踏まえると、妥当な量刑である。
判決56・57は、共犯者同士の事案であり、一方が16件、もう一方が8件であるにもかかわらず、いずれも執行猶予が付された珍しい事案である。
判決文を見てみると、判決56の被告人は、
「被告人Y1は,Aの指示で本件に加担し,更に被告人Y2を勧誘役に誘い、(中略 16名について)給付金の申請に必要な情報をAに取り次いだ。これに基づいてAの部下が申請行為を行い、その被害額は合計1600万円に達する。
Aら犯行グループの利益は専ら申請者の人数に係っており,その意味で勧誘役の役割は重要である。被告人Y1は,直接又は間接に16名もの勧誘に関わって被害拡大への寄与が大きく、犯行グループが各申請者から手数料の名目で受け取る75万円の中から30万円(合計480万円)もの高額な報酬も受け取っている。その反面、被害弁償においては、2名の不正受給分について合計80万円を負担したほか、無資力を理由に弁済原資をほとんど負担しておらず、被害回復への寄与が乏しい。本来、実刑に十分な理由がある。」としつつ、
「他方で、Aと被告人Y1の間には,本件の遂行に当たり明確に主従の関係がある。被告人Y1は、かねてAに心服し、Aが扱う投資案件の顧客を集めていたところ、Aから、ノルマが達成できていないので、誰でもいいから人を集めろと言われて本件に関与したもので、犯行立案への寄与はない。改めて受益の程度をみても,被告人Y1の得た報酬のうち少なくない額が、ノルマ補填を理由にAの投資案件に投資されたとみられる。被告人Y1が報酬目的で本件に加担し、現に報酬を得たことは否定すべくもないが、Aに次ぐ利益を得て、これを不当に保持したとみることは躊躇われる。これらの事実関係において,被告人Y1はあくまでAの手足に過ぎなかったといえ、その刑事責任は、犯行そのものを立案したAら主犯格との比較ではかなり落ちる。」
とした。
これを見ると、Y1すなわち判決56の被告人については、その役割は勧誘役に過ぎず、詐欺集団の中核を占めるとまでは言えない。Y1について犯情を悪質と評価する事情は、やはりその件数の多さと、報酬の高さにあると言える。ただ、件数については、役割分担は別個独立に検討することが通常であるため、役割分担の評価にこれを混入させると、同一の事情を二重に評価することになりかねない。
また、報酬が高いことは、役割が重要であることを推認させる間接事実となり得るものである。しかし、本件では、Y1はもともとAから投資案件(実質的にはマルチ商法のようなものではないかとも疑われる)の勧誘を支持される立場にあったことや、Y1が詐欺の報酬として受け取った金員の大半は、ノルマ補填の目的でAの投資案件に投資されたということであり、Y1に設定された報酬は、最初から投資案件への再投資を念頭に置いた名目的なもので会ったのではないかとの疑いも拭えない。
このように考えると、Y1の役割がAの手足にすぎないとまで言い切ってよいのかどうかはともかく、多分に従属的なものであったことは否定できないであろう。
その上で、一般情状として、「被害全額の回復を前提に、若年で、前科がなく、犯罪性向も進んでいないこと、母親が監督を約束し、就職先もあることなど有利に考慮すべき一般事情を考慮すると、執行猶予を付す余地はなお否定できない」とした。役割分担とその評価について、かなり踏み込んで実質的に判断した点に特徴がある。
判決57の被告人については、判決56よりもさらに下位の立場で、件数も8件である。判決でも、「Aとの関わりが間接的で,報酬も被告人Y1が得た中から申請者1名につき5万円の報酬を得ているに止まり,その刑事責任は被告人Y1との比較でやや落ちる。」とされている。
判決60は、判決文を検討すると、被告人自身が申請した1件と、知人を勧誘して確定申告をさせ、被告人が書類を作成して不正受給を行った4件との計5件の事案であったことが判明した。このため、被告人の役割については、従来、勧誘役としていたものを、首謀者+申請名義人と改めた。
判決では、「被告人に対しては実刑をもって臨むことも十分に考慮に値する。」としつつも、 「すべての共犯者が不正受給に係る金員を返還しており、被告人自身も2名の共犯者から受領した報酬を全額各共犯者に返還済みである。また、被告人自身が不正受給した判示第1の犯行についても、関係機関に返還の申出がされており、被告人の義父の立替により返還の手続がとられる予定である。」とされており、全額が返還見込みである。
件数が5件であり、全額返還見込みであることから、首謀者的地位で犯行を行った被告人については、執行猶予が選択されたものと思われる。もっとも、その役割の重要性から、懲役3年執行猶予5年という、執行猶予と実刑の限界的な判決となったものと考えられるところである。
判決61は、被告人が詐欺罪の故意を否認する主張をしていたようである。もっとも、判決では、被告人の弁解は「税理士の指導でお金を貰えるなら貰おうと思った、貰えないときは諦めるつもりだった」という程度のものであり、「欺罔行為の前提となる事実関係を全て認識している」とされているため、さほど意義のある弁解ではなかったようである。実務上も、内容虚偽の確定申告書や売上表を提出しておきながら、「個人事業主なので給付金は適法にもらえると思った」などと弁解する事例は極めて多いため、依頼者・相談者への説明ないし説得に苦労するところである。
否認事件であり、返金は全くなされていないものの、1件を自己名義で受給したものであることを踏まえて、懲役1年執行猶予4年とした結論は妥当であろう。
判決67は、大阪国税局OBの税理士による45件の事案であり、首謀者的地位にあるにもかかわらず、自首が成立するなどとして執行猶予が選択された珍しい事案である。
しかしながら、その判決における理由付けを見ると、全額返還見込みであることに加え、「自首するに当たり、不正請求に該当すると考えた請求内容を記載したリストを作成し、関係資料と共に速やかに捜査機関に提出したほか、その後も捜査に進んで協力したというのであって、被告人による自首が本件捜査を相当容易にさせた」とされている程度である。この程度の事案であれば、十数件でも実刑が選択されている事案も数多く存在するのであり、45件という件数に比較して、実刑を回避する理由としては不十分であると言わざるを得ない。
被告人の役割分担については、「持続化給付金制度に着目して不正申請のスキームを考え、共犯者らに対して不正受給を促すなどしたのは被告人であるし、申請手続を行ったり、事務所の従業員らに指示して行わせたりしていたのも被告人である。」というのであるから、まさに首謀者であるし、国税局OBで税理士としての知識・経験を生かしたものであると考えられるから、この点においても悪質である。
一般情状としても、前科前歴がないこと、税理士登録を抹消して廃業となったこと、情状証人の存在や贖罪寄付などを挙げているものの、実刑を回避する決定的な事情とは言い難い。
以上より、同種事案と比較してもこの判決の量刑は軽きに失すると思われ、自首の点を考慮したとしても、4-5年程度の実刑が妥当であったと思われる。
番外1・2は、経済産業省の現職官僚が行った不正受給として大々的に報道されたもので、番外1については控訴審判決も出て確定しているため、稿を改めて検討する。

今後の見通し

本年4月以降、持続化給付金に関する動きはやや下火になっていたものの、東京国税局職員等による組織的な持続化給付金詐欺が摘発されるなど、再び注目を浴びている。
詐欺罪の公訴時効は7年であるため、今後も立件が続くことは十分考えられるところであり、現に1年以上前に末端の受給者が捜査機関に相談に行ったものの、その後何らの連絡もなく推移している案件も存在する。
もっとも、捜査機関が動き出してから対応するよりも、早期に弁護人を選任の上、適切に対応した方が、長い目で見て不利益を減らすことができることは間違いない。

まとめ

前回も記載したとおり、持続化給付金不正受給は、初犯でも実刑の可能性がありうる事件類型である。
また、他の犯罪類型と比較すると、相応の学歴や社会的地位があり、家族や安定した勤務先を有する者がこの犯罪に手を染めていることも珍しくない。こういう場合、突如として逮捕・勾留され、長期間にわたって接見禁止となることにより、家族や仕事に与える影響は甚大であり、被疑者段階あるいは起訴後の保釈段階の弁護活動も重要になってくる。これらについては機動力が求められ、弁護士によって対応が異なってくるため、依頼する弁護士は慎重に選んだ方がよい。安易に、全国展開しているとか弁護士の人数が多いとか元検事の弁護士がいると言うだけで決めるというのは、あまりおすすめしない。
現在でも、持続化給付金詐欺の逮捕報道は連日行われている。また、量刑に際しての考慮要素については、事案の集積により分析が進んで来つつあるものの、総じて量刑は重くなる傾向にあるようである。このため、特に実刑と執行猶予の境界にある事案では、量刑に関する的確な主張・立証を行うため、早期に弁護士に相談の上、今後の対応を検討する必要がある。
また、実刑判決が見込まれる場合には、控訴するかどうか、再保釈の請求をするかどうかなど、一審の段階から十分に検討しておくことが肝要である。

ご依頼を検討中の方に~当事務所の方針

最後に、最近、問い合わせを受けることが多くなっているので、持続化給付金の不正受給に関する依頼を検討されている方に、当事務所の基本的な方針をお伝えしておきます。

被疑者段階

被疑者段階での依頼については、警察署等への接見が必要となってくるため、ある程度の地理的制約があります。このため、あまりに遠方の事件についてはお断りすることもあります。但し、現地に知り合いの弁護士がいる場合には、共同で受任して、接見は専ら現地の先生にお願いするという形で受任することは可能ですので、まずはお問い合わせいただければと思います。
当職が受任した場合、遠方に接見に行く場合には、交通費実費と日当をいただきます。日当については、距離や所要時間などによって異なってくるので、詳細は個別にお問い合わせください。
なお、正式に依頼するかどうかは未定であるものの、とりあえず一度接見に行った上で、今後の弁護方針に関するセカンドオピニオンを提供するということも可能です。こちらについては、日程が合う限りにおいて、全国対応が可能です。実際、令和3年度も、遠方での接見やセカンドオピニオンのご相談を複数、受任しています。弁護士費用及び日当、交通費については、個別にお問い合わせください。

被告人段階 第一審

起訴後からでも、勿論ご依頼は可能です。この場合、被疑者段階よりは接見頻度も少ないことが想定されるため、被疑者段階よりは、遠方のご依頼でもご負担は少ないと思います。保釈により釈放された場合には、テレビ電話等での打ち合わせも可能です。弁護士費用については、件数や認否、事案の複雑さによって変わってきますので、個別にご相談下さい。
被疑者段階同様、セカンドオピニオンのご依頼も歓迎です。

被告人段階 控訴審 上告審

控訴審、上告審のご依頼も可能です。
まず、第一審の判決謄本等を検討した上で、控訴に関する見通しについて意見を述べるという形でご依頼いただくことが可能です。
控訴審は、通常の事案であれば、弁論を1回開いて結審し、第2回で判決言渡しになることが多いため、遠方の事案でも、期日のために出廷する回数は2回となることが多いです。ただ、接見や保釈請求等の関係で出張が必要となることもあります。
第一審判決が実刑であった場合、保釈中でもそのまま拘置所に収監されることが多く、この場合は、控訴審での再度の保釈請求を行う必要があります。控訴審の保釈は、一審に比較して要件が厳格であり、また保釈金額も一審よりも高額に設定されることが多いと言えます。このため、保釈の必要性について詳細な事情をお伺いした上で、速やかに証拠をそろえて保釈請求を行う必要が出てきます。

判決文・報道記事提供のお願い

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こちらからお願いいたします。

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