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続報 持続化給付金詐欺 の判決まとめ10 実刑と執行猶予の狭間で

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はじめに

持続化給付金の不正受給について、一般の方や、全国で同種事案の弁護人をされる先生方の参考になるよう、持続化給付金の判決について、情報収集を行い、分析を続けている。前回の記事から、さらにいくつかの判決に関する情報を入手した。
これまでの過去記事は以下をご覧いただきたい。
続報 持続化給付金詐欺 の判決まとめ9 第一波と第二波の端境期
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【速報】 持続化給付金詐欺 の判決まとめ 20210429
前回から約1箇月を経過し、新たな事案が集積されてきたため、さらに分析を行いたい。
報道発表から読み取れる範囲で一覧表を作成しており、役割や被害弁償、分け前などについては一部、推測に渡るものも含まれている。また、本稿掲載時点で検察官による求刑まで行われ、判決言渡未了のものについても参考のために掲載した。
ちなみに、これらの判決の中で、当職が弁護人として関与しているものは存在しない。

最新の一覧表はこちら

判決内容

前回から8件(判決8件)増加し、執行猶予付判決が3件、実刑判決は5件となった。8件のうち、1件が高裁所在地の地方裁判所、6件がそれ以外の地方裁判所本庁、1件が支部の事件である。

判決の分析

判決66は、14件の勧誘役に関する判決である。被告人の努力により大半が返金済であるとされているにもかかわらず、懲役3年6月と比較的長期間の実刑が宣告されている。勧誘態様が首謀者的地位に近く、また組織的背景なども考慮されたのではないかと推測される。
判決67は、大阪国税局OBによる事案であり、被告人は首謀者で、45件と群を抜いて多数であるにも関わらず、自首が成立することや、税理士の職を失ったことなどを指摘して執行猶予を付したものである。しかしながら、他の事案と比較しても突出して件数も多く、また国税局OBで税理士であるとの知識・経験を悪用した点も悪質であると考えられ、執行猶予を付した結論には大いに疑問が残る。
判決68は、報道発表を見る限り、5件の事案と思われるところ、懲役4年2月というかなり長期間の実刑が宣告されている。これについては、詳細な検討ができていないため、十分な分析はできていない。
判決69も同様であり、懲役4年とかなり長期間の実刑が宣告されていることから、事案の詳細についての情報入手に鋭意努めているところである。
判決70は、10件の勧誘役の事案であり、懲役2年2月の実刑判決となっている。共犯者が全額を返金したと認定されており、被告人の努力によるものではないことから、実刑はやむを得ないと考えられる。
判決71は、11件の指南役、申請役による事案であり、懲役2年4月の実刑判決となっている。指南役とされた場合、単なる勧誘以上に、欺罔行為の主要部分に積極的に加担しているものと思われ、その分法益侵害の程度は大であると認定される傾向にあるものと思われる。
判決72は、4件の事例であり、検察官が懲役5年の実刑を求刑したのに対して、執行猶予を付した事案である。被告人は被害弁償を申し出ているに留まっているものの、返金の見込みがあると考えられたのではないかと思われる。また、比較的件数が少ないことに加え、自ら申請した分も含まれていることから、どちらかというと小規模な詐欺の末端に属すると評価されたのではないかとも推測される。検察官の求刑がやや重すぎるように感じられる。
判決73は、20件の事案で、執行猶予を付したという事案である。被害弁償は9割方完了又はその見込みであると認定されていることに加え、被告人は報酬を得ておらず、首謀者に都合よく利用されていた面も否定できないと判示されたことが決め手になっているように思われ、限界的な事例であると思われる。

年齢・職業

20代が39人、30代が16人、40代が9人、50代が3人、60代が1人、70代が1人であり、平均は31.65歳と、依然として若年者が圧倒的に多く、平均年齢も低い傾向にある。今回紹介した事例は、大半が20代である。

実刑判決と執行猶予の分水嶺

以前から指摘しているように、実刑判決と執行猶予判決との分水嶺は、被害額並び共犯者間での役割が最も重視される傾向にある。被害額が1000万円を超えてくるような場合、共犯者間での役割が相応に重要であると、大半について被害弁償を行ったとしても、実刑判決となる可能性が高い。他方で、被害額が多大であっても、従属的な地位に留まる場合には、執行猶予が選択されることもあるようである。ただこの場合も、被害弁償の状況がある程度考慮されているようである。
詐欺罪は財産犯であるものの、持続化給付金詐欺は、新型コロナウイルスによる不景気からの事業者の救済という、我が国の経済政策を直接的に妨害するものであることや、持続化給付金詐欺に対する対策のために多大な人的・物的資源が投入されることを余儀なくされていることなどから、通常の詐欺の事案に比較して、行為無価値的な側面が重視されているのではないかと思われるところである。
このため、事件を受任した場合には、被疑者(被告人)から、詐欺グループの全体像と被疑者が組織の中でになっていた役割を丁寧に聴取した上で、LINEやメールの履歴等の客観証拠にも照らし合わせて、これを適切に評価する必要である。そして、件数が比較的多く、被疑者の役割が軽視できない場合には、大半を被害弁償しても実刑判決となる可能性があることを十分に説明した上で、どこまで被害弁償を行うか、被疑者とよく協議することが重要である。一般的な事件にも妥当することであるが、被疑者は、保釈が認められればそのまま執行猶予になるだろうとか、全額返金すれば大丈夫だろうと言った甘い見通しを持っていることも少なくなく、この点に関する理解が不十分であると、弁護活動が不十分であったために実刑判決を受けたのではないかと誤解される原因になりかねないため、十分な注意が必要である。

今後の見通し

本稿掲載時点で73件の裁判例を紹介し、また他の給付金の詐欺についても、情報収集が進んでいる。
事案の詳細にもよるため、必ずしも即断はできないものの、やはり求刑、判決共に重くなっている傾向が見受けられる。特に、共犯者間での役割が重視される傾向を踏まえると、認め事件だからと言って安易に共犯者の供述調書に同意するのではなく、役割分担に関する事実関係について、共犯者の証人尋問を行うことが必要となってくる場面も出てくるのではないかと考えられるところである。特に、共犯者同士が併合して審理されている場合、弁論分離を求めるか否かの判断は重要であり、裁判所や検察庁が嫌がるからと言って分離の請求を躊躇ってはならない。

まとめ

前回も記載したとおり、持続化給付金不正受給は、初犯でも実刑の可能性がありうる事件類型である。
また、他の犯罪類型と比較すると、相応の学歴や社会的地位があり、家族や安定した勤務先を有する者がこの犯罪に手を染めていることも珍しくない。こういう場合、突如として逮捕・勾留され、長期間にわたって接見禁止となることにより、家族や仕事に与える影響は甚大であり、被疑者段階あるいは起訴後の保釈段階の弁護活動も重要になってくる。これらについては機動力が求められ、弁護士によって対応が異なってくるため、依頼する弁護士は慎重に選んだ方がよい。安易に、全国展開しているとか弁護士の人数が多いとか元検事の弁護士がいると言うだけで決めるというのは、あまりおすすめしない。
現在でも、持続化給付金詐欺の逮捕報道は連日行われている。また、量刑に際しての考慮要素については、事案の集積により分析が進んで来つつあるものの、総じて量刑は重くなる傾向にあるようである。このため、特に実刑と執行猶予の境界にある事案では、量刑に関する的確な主張・立証を行うため、早期に弁護士に相談の上、今後の対応を検討する必要がある。
また、実刑判決が見込まれる場合には、控訴するかどうか、再保釈の請求をするかどうかなど、一審の段階から十分に検討しておくことが肝要である。

ご依頼を検討中の方に~当事務所の方針

最後に、最近、問い合わせを受けることが多くなっているので、持続化給付金の不正受給に関する依頼を検討されている方に、当事務所の基本的な方針をお伝えしておきます。

被疑者段階

被疑者段階での依頼については、警察署等への接見が必要となってくるため、ある程度の地理的制約があります。このため、あまりに遠方の事件についてはお断りすることもあります。但し、現地に知り合いの弁護士がいる場合には、共同で受任して、接見は専ら現地の先生にお願いするという形で受任することは可能ですので、まずはお問い合わせいただければと思います。
当職が受任した場合、遠方に接見に行く場合には、交通費実費と日当をいただきます。日当については、距離や所要時間などによって異なってくるので、詳細は個別にお問い合わせください。
なお、正式に依頼するかどうかは未定であるものの、とりあえず一度接見に行った上で、今後の弁護方針に関するセカンドオピニオンを提供するということも可能です。こちらについては、日程が合う限りにおいて、全国対応が可能です。実際、令和3年度も、遠方での接見やセカンドオピニオンのご相談を複数、受任しています。弁護士費用及び日当、交通費については、個別にお問い合わせください。

被告人段階 第一審

起訴後からでも、勿論ご依頼は可能です。この場合、被疑者段階よりは接見頻度も少ないことが想定されるため、被疑者段階よりは、遠方のご依頼でもご負担は少ないと思います。保釈により釈放された場合には、テレビ電話等での打ち合わせも可能です。弁護士費用については、件数や認否、事案の複雑さによって変わってきますので、個別にご相談下さい。
被疑者段階同様、セカンドオピニオンのご依頼も歓迎です。

被告人段階 控訴審 上告審

控訴審、上告審のご依頼も可能です。
まず、第一審の判決謄本等を検討した上で、控訴に関する見通しについて意見を述べるという形でご依頼いただくことが可能です。
控訴審は、通常の事案であれば、弁論を1回開いて結審し、第2回で判決言渡しになることが多いため、遠方の事案でも、期日のために出廷する回数は2回となることが多いです。ただ、接見や保釈請求等の関係で出張が必要となることもあります。
第一審判決が実刑であった場合、保釈中でもそのまま拘置所に収監されることが多く、この場合は、控訴審での再度の保釈請求を行う必要があります。控訴審の保釈は、一審に比較して要件が厳格であり、また保釈金額も一審よりも高額に設定されることが多いと言えます。このため、保釈の必要性について詳細な事情をお伺いした上で、速やかに証拠をそろえて保釈請求を行う必要が出てきます。

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