弁護士の水野です。今日はですね、ちょっとライトな動画で、「会長声明って何なんだ?」という話をしていきたいと思います。
報道で、神奈川県の座間市で起こった連続殺人事件の被告に対して、死刑が執行されたという報道がありました。それに対して、日本弁護士連合会(日弁連)の会長声明で、「死刑は廃止すべきだ」といった内容の声明が出たということで、これについてX(旧Twitter)など、インターネット上でいろいろと物議を醸している状況です。
この話について、死刑に賛成・反対かという点はひとまず置いておいて、皆さんに一つだけ知っておいていただきたいことがあります。
それは、日弁連の会長声明というのは、別に弁護士の総意でもなければ、何か多数決を経て出されたというわけでもないということです。実際のところ、普通の弁護士は、出されるまでそのような声明が準備されていることすら知りません。
たとえば、「決議」などであれば、何らかの手続きを経て、多数決を取った上で出されるというのが通常ですが、会長声明については、所管の委員会のような内部組織が「出してよいか」という手続きを内々に行い、それが通ればそのまま会長声明として出されます。
つまり、「こういう声明を出しますので、意見をください」とか、「賛成・反対を表明してください」といった手続きは一切行われていないんです。
ですので、当然私もそうですが、ネット上で批判している弁護士の多くも、声明が出るまでそんなものが準備されているなんて知りませんでした。それが一般的な状況です。
したがって、「全弁護士が死刑に反対している」とは全く言えませんし、声明が出されるまでにそのような議論が広く行われたわけでもありません。言い方は悪いですが、一部の人が勝手に進めて、「これは会長の意見です」という形で出している、そういう性質のものです。
一般の皆さんには、そういった事情を踏まえた上で読んでいただきたいと思います。死刑に賛成するのも反対するのも構いませんが、日弁連の会長声明というのは、そういうプロセスで出されているものだということを、ぜひ理解していただきたいです。
それを理解せずに、「弁護士は全員死刑に反対している。けしからん」といった形で批判し始めるのは、前提が違っていますよ、ということをわかっていただけるとありがたいです。
というか、アンフェアというか、不親切というか、ミスリーディングですよね。声明の末尾にでも、「これは一部のメンバーによって検討され、作成されたものであり、弁護士全体の総意ではありません」といった脚注をつけてくれればいいんですけどね。
ということで、「会長声明とは何か?」という点について、「割り引いて考えてください」ということをお伝えしました。
弁護士会はさまざまな声明等を出していますが、その中には「まあ、概ねそうだろうな」というコンセンサスが取れるようなものもあれば、今回のように、死刑制度や憲法9条など、政治的に意見が分かれるような話題について、一部の思想の人たちが「会長声明」という形で出してしまい、それに関与していない人たちまで、とばっちりを受けるということがあります。大量懲戒請求の問題もまさにそうですよね。
その結果、弁護士全体に対して偏ったイメージを持たれてしまうことがあります。これは言い方は悪いですが、「サイレントマジョリティ」からすると非常に迷惑な話なんです。
ですから、ここについては、市民の皆さんが変な誤解をされないように、ということで、今回注意喚起としてお話をさせていただきました。
次に会長声明が出たときは、「一部の人が集まって、急いで作って出したもの」ぐらいに思っていただいて結構です。「誰かがつぶやいた」ぐらいの気持ちで読んでいただいて、それを見て「弁護士って全員こうなんだ」といったイメージを持って攻撃するのは、やめていただけるとありがたいです。というお話でした。